ユトランド沖で交わされた大規模な艦隊決戦の報せは、瞬く間に両国の国民の間へと広まっていった。その受け止め方は様々であった。ある者は勝利の確信を胸に熱狂し、ある者は失われた命を想って深い悲しみに沈み、また別の者は戦局の先行きに絶望を口にした。
ドイツ帝国宰相からの電報
ドイツ帝国宰相は、艦隊司令官宛てに次のような電報を送りつけた。
「数において優勢な敵――自らこそ無敵であると信じて疑わなかった相手――に果敢に立ち向かったこの艦隊のおかげで、今や誇りと熱狂がドイツ全土を覆っている。ドイツ艦隊とは何であり、何を成し遂げうるのか。それが今や万人の目に明らかとなったのだ」
この言葉は、公海上で世界最大級の艦隊と真正面から渡り合ったドイツ大洋艦隊の戦果を称えるものであり、国内世論の高揚を象徴する電文として記録に残されている。
ジョージ5世国王からのメッセージ
一方、イギリス側では、ジョージ5世国王がジェリコー提督に対して以下のメッセージを送った。
「祖国のため散った多くの勇敢な将兵、そして多くの友人たちの死を、私は深く悼む。だが、私がそれ以上に遺憾に思うのは、ドイツ艦隊が霧に紛れてその運命から逃れ去ったことである。悲しみに満ちた知らせに接してはいるが、貴官の指揮下にある艦隊の武勇と有効性に対する私の信頼は、微塵も揺らぐことがない」
国王の言葉には、喪失の痛みとともに、決定的な勝利を逃した悔しさが滲んでいた。それでもなお、全艦隊が戦列に加わって戦い抜いた事実への信頼は揺るぎないものだった。
海軍本部の沈黙と戦闘の全体像
海戦の終息後、イギリス海軍本部は長く沈黙を守った。この情報の空白は、5月31日に実際に何が起こったのかを人々が理解しようとする努力を、決して容易なものにはしなかった。
しかしながら、関係当局による精緻な調査と、生き残った将兵・指揮官たちへの数多くの聞き取りが積み重ねられることで、あの激闘の経過については、かなりの精度を持った全体像を復元することが可能となっていった。断片的な証言をつなぎ合わせることで、霧の中で逃れた「運命」と、その代償となった犠牲の実態が、少しずつ歴史の光の下に置かれていくのである。