古代の歴史

アメリカ海兵隊(USMC)―― 迅速展開力を誇る海軍歩兵の精鋭

アメリカ海兵隊(USMC)―― 迅速展開力を誇る海軍歩兵の精鋭

概要

アメリカ海兵隊(United States Marine Corps、略称:USMC)は、アメリカ合衆国軍を構成する5軍種のひとつです。本来は「海軍歩兵」として位置づけられますが、独自の航空戦力と後方支援部隊を保有し、統合任務部隊として自律的な作戦遂行が可能です。

行政面では海軍省の管轄下にありますが、アメリカ海軍とは別個の軍種として独立しています。前身の「大陸海兵隊」がアメリカ独立戦争中の1775年11月10日に創設され、1798年7月11日の議会法案によって正式に「アメリカ海兵隊」として再編されました。

法的保護と使命

海兵隊は、アメリカ軍の中で唯一「法律によって存続が保証されている」軍種です。第2次世界大戦から朝鮮戦争にかけて陸軍への統合が何度も議論されましたが、1952年第82議会のプログラム法第416条により、大統領も国防長官も海兵隊を解散させたり象徴的な部隊に縮小させたりすることはできないと定められました。同法は、最低でも「3個師団相当の地上部隊」と「3個海兵航空団」の維持を義務づけています。

「レザーネック(革の襟)」の愛称で知られる海兵隊は、創設以来300以上の作戦劇場で戦ってきました。独自の歩兵・機甲連隊・航空戦力・後方支援部隊を擁し、上陸作戦では海軍の「ゲーター・ネイビー(強襲揚陸艦隊)」の揚陸艇・揚陸艦を利用します。

その役割は、陸軍の重装備が到着するのを待たず、自律的な遠征軍として「いち早く現場に展開し、初期対応を行うこと」にあります。

儀仗・輸送・シンボル

  • 他軍種とは異なる独自の戦闘服・礼服を着用し、国家の軍隊の中でも殊さらな存在感を示します。
  • 大統領名誉警護隊および在外公館警備を担当します。
  • ワシントン海兵隊兵舎には「海兵隊軍楽隊」(大統領名誉軍楽隊)が駐屯しています。
  • 大統領専用ヘリ「マリーンワン」を運用する第1海兵ヘリコプター飛行隊(HMX-1)も海兵隊所属です。

モットーはラテン語の 「Semper Fidelis(常に忠実)」、略して「Semper Fi」。行進曲も同名です。マスコットはブルドッグの「チェスティ」(Chesty)。第1次世界大戦のブローニュの森での戦闘で、ドイツ兵が海兵隊を「Teufel Hunden(悪魔の犬)」と呼んだことに由来します。教官帽「スモーキー・ベア」は同名の漫画キャラクターにちなむものです。戦いの掛け声「ガンホー(Gung Ho)」は中国語の「工合(共同作業)」に由来し、第2次世界大戦中に取り入れられました。

主な戦歴・展開実績

18〜19世紀

  • アメリカ独立戦争(1775-1783)
  • 準戦争(対仏海戦、1798-1800)
  • トリポリ戦争(1801-1805)
  • 米英戦争(1812)
  • メキシコ・アメリカ戦争(1846-1848)
  • 南北戦争(1861-1865)
  • 朝鮮出兵・江華島事件(1871)
  • 米西戦争(1898)
  • 義和団の乱・北清事変(1900)

20世紀

  • 第1次世界大戦(1917-1918)
  • 第2次世界大戦(1941-1945)
  • 朝鮮戦争(1950-1953)
  • ベトナム戦争(1962-1973)
  • グレナダ侵攻(1983)
  • レバノン多国籍軍(1982-1984)
  • 湾岸戦争(1990-1991)
  • ソマリア人道支援(1992-1993)
  • ボスニア・ヘルツェゴビナ平和維持(1995-)
  • コソボ紛争・合同守護作戦(1999)

21世紀

  • アフガニスタン侵攻・不朽の自由作戦(2001-)
  • イラク戦争・イラクの自由作戦(2003-)
  • ハイチ派遣(2004-)

組織・編制

海兵隊のトップは大将(四つ星)の「海兵隊司令官」で、伝統的にワシントンの海兵隊兵舎に居住します。2002年時点ではマイケル・W・ヘイジー大将が第33代司令官を務めていました。

作戦面では以下の2つの方面軍に分かれます。

  • 太平洋海兵隊(MARFORPAC):司令部はハワイ真珠湾
  • 大西洋海兵隊(MARFORLANT):司令部はバージニア州ノーフォーク

基幹戦力は 3個海兵遠征軍(MEF) で、各MEFは以下で構成されます。

  • 海兵師団(地上戦闘要素)×3(うち1個は予備役)
  • 海兵航空団(航空戦闘要素)×3(うち1個は予備役)
  • 海兵兵站群(後方支援要素)×3(うち1個は予備役)
  • 海兵遠征部隊(MEU、強化連隊規模・約2,200名)×7

海兵遠征旅団(MEB)は7,000〜15,500名、航空機110機、ヘリ120機を擁する中規模即応部隊です。

兵力推移と構成

年次現役定数師団数
1945年(ピーク時)485,000名6個師団
1950年(朝鮮戦争勃発時)75,000名2個師団
1951年192,620名3個師団
2002年173,733名3個師団
2011年(2007年予測)202,000名3個師団

予備役は約104,000名。現役の約20%(約35,000名)が、海軍の揚陸艦40隻(うち強襲揚陸艦12隻)で輸送可能です。

女性隊員は全体の6.2%、将校に占める割合は4.3%(2004年時点で768名)。1918年から女性の入隊が認められましたが、米軍の中では最も女性比率が低い軍種です。2005年時点で現役の3.8%(6,440名)が米国籍非保持者で、多くは服務中または除隊後に市民権を取得しています。