古代の歴史

ヴォウジュ――中世ヨーロッパの長柄武器、その特徴と戦術

ヴォウジュ――中世ヨーロッパの長柄武器、その特徴と戦術

ヴォウジュ(vouge/voulge)は、「破城刀」とも呼ばれる中世の長柄武器です。13世紀末にドイツおよびスイス地方で登場し、主に歩兵によって使用されました。多くの長柄武器と同様に、その起源は農業用具にあると考えられています。

ヴォウジュの構造と特徴

ヴォウジュは、幅広の刃を約2メートルの長い柄に取り付けた構造を持っています。この刃の形状は、当時使われていた大型の切断道具を思わせるものです。さらに、刃の反対側には「牙(ファング)」と呼ばれる鉤状の突起が追加されることもありました。

この突起のおかげで、ヴォウジュは重厚な斧のように振り下ろして切り裂くことができるだけでなく、先端で突き刺すことや、鋼鉄の鉤で敵を引っ掛けて引き倒すことも可能でした。一つの武器で斬る・突く・絡め取るという三つの攻撃手段を兼ね備えていた点が、大きな特徴といえます。

戦場での運用――騎兵に対する切り札

ヴォウジュは、騎乗の敵兵に届き、馬の飛節(後ろ脚の関節)を切り裂くことを目的として設計されました。また、甲冑の継ぎ目にある革紐を断ち切ることで、防御力を崩す役割も果たしました。

この武器を扱う兵士は「ヴォウジエ(vougiers)」と呼ばれました。彼らは約2メートル間隔で縦2列か3列に整然と並び、その任務は敵騎兵の突撃を食い止めて隊列を崩すことにありました。騎兵対策が主目的ではあるものの、機会があれば歩兵の突撃に対しても使用されたと伝えられています。

ハルバードへの進化

ヴォウジュはスイスで独自の発展を遂げ、その改良の過程で生まれたのが、後に中世戦術を一変させることになる「ハルバード」であると言われています。斧・槍・鉤の機能を一体化したハルバードは、ヴォウジュの実戦経験から磨かれた長柄武器の集大成ともいえる存在なのです。