トレビュシェットとは
トレビュシェット(trebuchet)は、中世ヨーロッパで用いられた大型の攻城兵器(投石機)です。巨大な錘(カウンターウェイト)の落下力を利用して石などの投射物を撃ち出す仕組みで、城壁の石積みを破壊する目的でも、防塁の内側へ投射物を投げ込む目的でも使用されました。
人力で綱を引いて投擲する古い形式の「牽引式トレビュシェット」と区別する際には、「カウンターウェイト式トレビュシェット(配重式投石機)」と呼ばれることもあります。
基本情報
- 種類:攻城兵器
- 使用時期:12世紀~16世紀
- 操作要員:約60名
重量・寸法・性能
- カウンターウェイト(錘)の質量:10~18トン
- 投擲アームの全長:8~12メートル
- 投射物の質量:80~100kg
- 射程:約200m
- 発射速度:毎時1~2発
歴史
カウンターウェイト式トレビュシェットは12世紀前半、地中海沿岸地域においてキリスト教圏とイスラム勢力圏の双方でほぼ同時に登場したと考えられています。約140kg(300ポンド)もの投射物を高速で撃ち出すことが可能で、当時の堅固な城壁にも深刻な損害を与えられる威力を誇りました。
その原型となる牽引式トレビュシェットは、紀元前4世紀頃の中国で生まれ、6世紀頃にヨーロッパへ伝わったといわれています。一方、カウンターウェイト式は火薬と大砲が実用化された後も現役であり続け、16世紀になってようやく時代遅れの存在となりました。
また、包囲戦においては病気で死亡した死体などを城中へ投げ込み、疫病を蔓延させるという手法が取られることもありました。これは生物戦の一種とも言える、中世ならではの過酷な戦術です。
特徴と逸話
トレビュシェットは、他の中世のカタパルト類に比べて格段に命中精度が高いことで知られています。その威力と精度ゆえに、十字軍の時代には最強の攻城兵器として恐れられました。
第三次十字軍のアッコ包囲戦(1191年)では、イングランド王リチャード1世(獅子心王)が自軍の2基のトレビュシェットに「神の投石機」と「悪い隣人」という印象的な名前を与えた逸話が残っています。
しかしその精巧な建造技術は16世紀初頭には失われ、現在知られている構造の詳細は、後世の記録や復元研究によって明らかにされたものです。