古代の歴史

ヨーロッパ最古の地図は青銅器時代に作られていた――サン・ベレック石板が明かす4000年前の風景

ヨーロッパ最古の地図は青銅器時代に作られていた――サン・ベレック石板が明かす4000年前の風景

サン・ベレック石板の全景 出典:INRAP / SERVICE DE PRESSE

彫刻の施された石板は、解読の難しいなぞなぞのように見えることがあります。しかし、1900年に発見されたフランスのサン・ベレック石板(Saint-Bélec slab)には、発見から1世紀を経てついにその「シャンポリオン」が現れました。エジプト文字を解読した学者の名になぞらえられるほどの大発見です。最新の研究により、この石板が地図を表していること、しかもヨーロッパで知られている最古の地図であることが明らかになったのです。

石板が見つかったのは、フランス北西部ブルターニュ地方フィニステール県ルアン(Leuhan)にある墳丘墓でした。先史学者ポール・デュ・シャトリエ(Paul du Chatellier)はここで石板を発見し、詳細に記録しています。彼はその年代を前期青銅器時代(紀元前2150年~紀元前1600年頃)と特定しました。全面に施された彫刻には、線、杯状穴(カップマーク)、円、四角形といった繰り返しのモチーフが刻まれ、それらが点線で結ばれており、当時から研究者たちの強い関心を引いていました。

地下室で忘れ去られた石板

破損していたこの青灰色の片岩製石板は、全長2.20メートル、幅1.53メートルにおよびます。前期青銅器時代末期の墳丘墓では、箱式石棺の壁材として再利用され、彫刻面を墓の内側に向けて据えられていました。サン・ジェルマン・アン・レー国立考古学博物館(MAN)が1924年にこれを購入したものの、その後は忘れ去られ、博物館の城館にある地下室で静かに眠ることとなりました。奇跡的に再発見されて以降、2014年から本格的な調査研究が進められています。

西ブルターニュ大学とボーンマス大学(イギリス)、CNRS(フランス国立科学研究センター)、Inrap(予防考古学国立研究所)の研究チームは、この石板を徹底的に分析しました。写真測量(フォトグラメトリー)による撮影や高解像度の3D計測を実施し、表面の起伏を正確に記録しながら形態を解析していったのです。

その結果、石板は意図的に深く掘り込んで加工されており、東北東から西南西の軸に沿って、縦30キロメートル×横21キロメートルの領域を表していることが判明しました。研究者たちによれば、刻まれた模様の全体はひとつのネットワークを形成しており、ルアン付近を流れるオデ川(Odet)の谷に対応する地図表現であるというのです。

約4000年前の人々が、自らの生活圏である川の流れや地形を石板に刻み込んで「地図」として表現していた――サン・ベレック石板は、先史時代の人類がすでに高度な空間認識を持っていたことを物語る、貴重な証言といえるでしょう。