古代の歴史

世界初の紙幣は中国で生まれた――唐代の「飛銭」から明代の紙幣まで

紙幣の起源は807年の中国にあり

紙幣の歴史は、8世紀末から9世紀初頭の中国にさかのぼります。唐(618~907)の皇帝・憲宗は、807年、銅の産出減少によって銅銭の鋳造が困難になったことを受け、紙の「手形」による流通を奨励しました。貴重な銅を貨幣以外の用途に残すための、実用的な解決策だったのです。

その仕組みは次のようなものでした。商人たちは所持する銅銭を公営の財務事務所に預け、その引き換えに債券証書を受け取ります。この証書は「飛銭(ひせん)」と呼ばれ、資金が空を飛ぶように素早く移動できることから、この名が付いたといわれています。飛銭は厳密には現代の紙幣ではなく送金手形に近いものでしたが、紙で価値をやり取りする仕組みの先駆けとなりました。

民間の手形から国家発行の紙幣へ

それから約1世紀後、同じく中国において、有力な商家たちが一定量の金属貨幣と引き換えられる約束手形の発行を始めます。これらは一覧払い、つまり提示すれば直ちに支払うことを原則とするもので、今日の小切手や銀行券の原型と位置づけられます。

さらに数十年後、宋(960~1279)の時代になると、紙幣の発行は国家レベルで管理されるようになりました。四川地方で民間の手形として流通していた「交子(こうし)」は1023年に国営化され、世界初の政府発行紙幣とされています。

そして明(1368~1644)の時代には、一覧払いでの支払いが保証された最初の紙幣が一般に流通しました。洪武帝が発行した「大明宝鈔」がそれで、桑の樹皮を原料とする用紙に印刷され、偽造には厳しい刑罰が科されるなど、国家の信用を背負った通貨として運用されました。

ヨーロッパ初の紙幣はスウェーデンから

一方、ヨーロッパで最初の紙幣が誕生したのは1661年、スウェーデンでのことでした。ストックホルム銀行が発行した銀行券がヨーロッパ初の紙幣とされ、ここから近代的な銀行券制度が各国へと広がっていきました。

画像について

画像:
明代(1368年~)の中国紙幣。桑の樹皮から作られたもので、A4判よりやや大きなサイズです。

世界初の紙幣は中国で生まれた――唐代の「飛銭」から明代の紙幣まで

次の記事