古代の歴史

マグナ・カルタとは?王権を制限した西洋初の憲章の歴史と影響

マグナ・カルタ(Magna Carta)は、1215年にイングランド王ジョン(通称・欠地王)が貴族たちの要求を受けて調印した文書で、国王の権力に一定の制限を設けることを定めたものです。

西洋世界初の憲法的文書と位置づけられており、近代の人権思想や立憲主義の先駆けとして、後世に絶大な影響を与えました。

歴史的背景

中世後期のヨーロッパでは、国王は「primus inter pares(同輩中の第一人者)」とみなされていました。王は貴族より上位の存在ではあったものの、その支持を取り付けるためには婚姻政策や軍事同盟などを通じた交渉が不可欠だったのです。

そのため、王が実効的な権力を行使できるのは自らの直轄らの直轄領にとどまり、貴族たちはそれぞれの封土を支配していました。王による課税や臣従の誓いという仕組みは存在しましたが、貴族が常に君主に忠誠を尽くす保証はありませんでした。

マグナ・カルタとは?王権を制限した西洋初の憲章の歴史と影響

中世の王たちが貴族間の抗争を避けるために用いた手法の一つが、共通の敵との戦いへ彼らを駆り立てることでした。1199年から1216年までイングランドを治めたジョン王も、フランスとの戦争でこの戦略を繰り返し使いました。ところが、この作戦は失敗に終わります。

北フランスでの戦役は惨憺たる結果に終わり、巨額の費用を費やした割には、イングランド貴族たちが期待した土地は手に入りませんでした。そればかりか、ジョン王は戦争継続のためにより多くの資金・兵員・武器を貴族に要求し、応じなければ財産を没収するという強権を振るったのです。

加えて、王自身の人柄も同盟者の心を掴むものではありませんでした。前妻を投獄し、敵対者を餓死させ、さらには実の甥を殺害した疑いをかけられたとも伝えられています。

こうした中、多くの男爵(バロン)が結束して王に立ち向かい、貴族側が定めた法律を尊重するよう要求しました。ジョン王は「王が従うべきは神の法であって人の法ではない」と主張してこれを退けました。そこで男爵たちはロンドンを包囲し、王に交渉を余儀なくさせたのです。

そして1215年6月、王はしぶしぶながらマグナ・カルタに署名しました。西洋の歴史において、王の権力が神の法ではなく人間の法によって制限されたのは、これが最初の出来事でした。

しかし、マグナ・カルタは望まれた平和をもたらしませんでした。むしろ男爵たちとジョン王との間で内乱が勃発します。当初は教皇インノケンティウス3世によって無効と宣言されましたが、ジョン王の死後、13世紀中に3回にわたって再発布され、ようやくイングランド社会に根付いていきました。

マグナ・カルタとは?王権を制限した西洋初の憲章の歴史と影響

マグナ・カルタの主な条項

現代の視点から特に重要とされる主な条項は次の通りです。

  • 「自由人」は正当な裁判なしに逮捕・投獄されないこと。
  • 人身保護(ヘイビアス・コーパス)制度の萌芽。
  • 推定無罪の原則につながる考え方。
  • 課税には納税者の同意(代表)が必要なこと(代表なくして課税なし)。

ただし、最初の条項は当時の社会構造に即して読み解く必要があります。「自由人」と認められたのは基本的に貴族階級だけであり、農村の労働者は在地領主の法に従属していました。つまり、当時の自由は人口のごく一部にしか保障されていなかったのです。

一方、最後の条項は18世紀のアメリカ植民地人にとって重要な論拠となりました。十三植民地の人々は税を納めながらもイギリス議会に代表を送ることができず、「代表なくして課税なし」の精神のもと、本国に対してより大きな権利を求める運動を展開していきます。

マグナ・カルタの遺産

マグナ・カルタは制定された当時こそ十分に機能しませんでした。それでも、後世の思想家たちが政治権力の濫用と闘ううえで大きな着想源となり続けました。

たとえばアメリカ合衆国憲法の起草には、マグナ・カルタの理念が色濃く反映されています。今日でも世界中の憲法学者のあいだで、権力濫用を防ぐ最初の試みとして言及される存在なのです。

ブラジルのマグナ・カルタ

ブラジルにも「マグナ・カルタ」に相当するものがあります。それが1988年憲法です。同国は独立以来、時代ごとに何度も新しい憲法を制定してきました。

一部の憲法は、民主的に選出された憲法議会によって起草されました。このように国民の意思に基づいて作られたものは「制定憲法」と呼ばれます。

一方で、ヴァルガス政権下の1937年憲法は、国民の意見を問うことなく大統領が一方的に押し付けたものでした。このように統治者が国家に強制的に授けた憲法は「欽定憲法」と呼ばれます。

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