エリザベス朝の服装(Elizabethan clothing)とは、イングランド女王エリザベス1世の治世、およそ1558年から1603年にかけて花開いた独特の服装様式を指します。この時代の服飾は、豪華さ、華美さ、そして精巧な装飾が最大の特徴であり、当時の社会や文化を色濃く反映していました。ここでは、エリザベス朝服装の主な特徴を詳しくご紹介します。
女性のファッション
1. ガウン(Gowns)
女性は、胴部分が体にフィットし、裾が大きく広がるガウンを着用していました。胸元は低くカットされたデザインが多く、精巧な刺繍やレース、縁取り装飾で華やかに彩られていました。
2. オーバーガウン(カートル)
オーバーガウンは「カートル(kirtle)」とも呼ばれ、ガウンの上に重ねて着用される外衣でした。ビロードやシルクといった高級生地で仕立てられることが多く、下に着るガウンとの対比を楽しむために、あえて異なる色を選ぶのも流行でした。
3. ラフ(Ruff)
ラフはエリザベス朝ファッションを象徴するアイテムです。デンプン糊で固めたリネンやレースで作られた幅広の円形の襟で、顔をフレームのように引き立てる役割を果たしました。
4. 袖のデザイン
袖は大きく膨らませたり、「スラッシュ」と呼ばれる切り込み装飾を施したりすることで、ドラマチックで個性的な印象を演出していました。
5. コルセット
コルセットは腰を強く締め付け、当時理想とされたアワーグラス(砂時計型)の体型を作り出すための必需品でした。
男性のファッション
1. ダブレット(Doublet)
男性は「ダブレット」と呼ばれる、体にフィットした袖付きの上着を着用しました。襟ぐりが浅いのが特徴で、精緻な刺繍や金属糸による装飾が施された豪華な仕上がりのものが多く見られます。
2. ブリーチズ(Breeches)
ブリーチズは現代のズボンに相当する衣類で、膝丈のものが主流でした。素材には主にウールやレザーが使われています。
3. ストッキング
ストッキングはブリーチズの下に履くもので、シルク製またはウール製のものが用いられました。脚線美を見せる実用的かつ装飾的なアイテムでした。
4. コッドピース(Codpiece)
コッドピースは、ブリーチズの前面に取り付けられた装飾的な布片で、男性器を覆う役割を担っていました。精巧な刺繍が施されることも多く、男性的な力強さや多産の象徴とされていました。
5. 帽子
男性は多彩な帽子を身につけました。羽根飾りの付いたキャップやフラットキャップなどが、エリザベス朝時代に特に人気がありました。
使用された生地と色彩
1. 生地
エリザベス朝の服装には、ビロード、シルク、サテン、ブロケードといった高級感あふれる生地がふんだんに使用されました。
2. 色彩
赤、青、緑、黄といった鮮やかで明るい色合いが大変人気でした。黒や茶色などの落ち着いた色も使われましたが、登場する頻度は比較的低めでした。
エリザベス朝服装に込められた社会背景
エリザベス朝の服装は、当時の社会的・文化的・経済的な変化を映す鏡のような存在でした。富裕層や上流階級の人々は、衣服を通じて自らの地位・権力・富を誇示しました。さらに、身分ごとに着用できる服装の種類を規定した「贅沢禁止令(サンプチュアリー法)」も存在し、これがエリザベス朝ファッションの発展に大きな影響を与えたのです。