アーツ・アンド・クラフツ運動は、19世紀半ばのイギリスで始まったデザインと工芸の思想的潮流です。おおよそ1860年から1910年頃にかけて最も大きな影響力を持っていました。
運動が始まった背景
産業革命による大量生産の普及により、粗悪で画一的な工業製品が市場にあふれるようになったことが、この運動のきっかけとなりました。機械生産への反発から、「手仕事の価値」や「美しさと実用性の融合」を見直そうとする動きが起こったのです。
ウィリアム・モリスという中心人物
詩人でありデザイナーでもあったウィリアム・モリスは、この運動の中心的な存在です。彼は思想家ジョン・ラスキンの理念に深く影響を受け、中世の職人精神を現代によみがえらせることを目指しました。1861年には自身の工房を設立し、壁紙、織物、家具など、暮らしを彩る美しい日用品の制作に取り組みました。
運動の特徴と世界的な影響
アーツ・アンド・クラフツ運動は、単一の様式にとどまらず、建築、インテリア、グラフィックデザインなど幅広い分野に影響を及ぼしました。その理念はヨーロッパ各国やアメリカへと広がり、後のアール・ヌーヴォーの誕生にもつながっています。
また日本においても、柳宗悦らが提唱した民藝運動など、手仕事を尊重する思想として受け継がれており、現代のデザインにもその精神は息づいています。