「ミノス王がダイダロスとイカロスに迷宮(ラビュリントス)の建造を依頼した」というのは、よくある誤解です。実は、ミノス王がこの二人に迷宮を作るよう頼んだわけではありません。
ミノス王が実際に行ったこと
ミノス王が行ったのは、むしろ逆の行為でした。王は、建築家ダイダロスがみずから設計し建造したその迷宮に、ダイダロス自身を閉じ込めたのです。優れた技術者を手放しで抱えることを恐れた王は、彼を自由にさせなかったと言われています。
神話の背景――迷宮とミノタウロス
ギリシャ神話によれば、ダイダロスはクレタ島に招かれ、牛頭の怪物ミノタウロスを閉じ込めるために、外に出られない複雑な迷宮を設計しました。しかし後年、ダイダロスがアリアドネに「糸を使えば迷宮から戻れる」という知恵を授け、英雄テセウスの脱出を助けたことがミノス王の知るところとなります。これが王の怒りに触れ、ダイダロスは息子イカロスとともに幽閉されてしまったのです。
翼による脱出とイカロスの悲劇
閉ざされた迷宮の中でも、ダイダロスの発明の才は衰えませんでした。彼は鳥の羽と蝋(ろう)で翼を作り、息子とともに空へ逃れようとします。しかし若いイカロスは飛ぶ喜びに夢中になるあまり、父の忠告を破って太陽に近づきすぎました。熱で蝋が溶け、翼は崩れ落ち、イカロスは海へ墜落して命を落としたのです。
まとめ
つまり正しくは、「ミノス王が二人に迷宮の建造を依頼した」のではなく、ミノス王が、ダイダロス自身の手による迷宮に彼を幽閉したというのが真相です。創造者の才ゆえに王の猜疑を買い、自らの作品に囚われたダイダロス――この皮肉な展開こそが、ギリシャ神話屈指の名場面として今も語り継がれています。