ウォッカとトマトジュースをベースにした鮮やかな赤いカクテル「ブラッディ・メアリー」。その名前を聞くと、多くの人がイングランド・チューダー朝の女王メアリー1世を思い浮かべるでしょう。しかし実は、このカクテルがメアリー1世にちなんで名付けられたという確かな証拠は存在しません。
なぜ「メアリー1世由来説」が広まったのか
メアリー1世(1516年〜1558年)は、在位中の宗教政策においてプロテスタントを厳しく弾圧し、数百人を火刑に処しました。この過酷な統治により、後世「ブラッディ・メアリー(血まみれのメアリー)」というあだ名で呼ばれるようになりました。赤いカクテルの名前と重なりやすいことから、両者を結びつける説が広く知られるようになったのです。
しかし、カクテルの誕生は1920年代とされており、女王の時代とはおよそ400年の隔たりがあります。さらに、彼女の治世や人物像とカクテルを結びつける信頼できる史料は一切確認されていません。
実際の命名の起源とされる諸説
ブラッディ・メアリーの考案者は、1920年代にパリの「ハリーズ・ニューヨーク・バー」でバーテンダーを務めていたフェルナン・ペティオであるとするのが最も有力です。名前の由来については、以下のような説が語り継がれています。
- シカゴのバーの従業員説:「バケツ・オブ・ブラッド(Bucket of Blood)」というナイトクラブで働いていた女性「メアリー」にちなんだという説。
- 女優メアリー・ピックフォード説:当時絶大な人気を誇った女優の名前に由来するという説。
- 外見からの連想説:トマトジュースの深い赤色が血を連想させ、そこに「メアリー」という女性名が組み合わさって定着したという説。
いずれの説も決定的な裏付けがあるわけではありませんが、いずれも20世紀初頭のアメリカやパリの酒場文化と密接に関わっている点が共通しています。
まとめ
ブラッディ・メアリーというカクテル名は、チューダー朝の女王メアリー1世に直接由来するものではなく、それを裏付ける信頼できる歴史的証拠も存在しません。1920年代に誕生したこのカクテルの名前は、複数の俗説が混ざり合う中で自然に定着したものと考えられています。とはいえ、赤い色合いと「血」を連想させるネーミングが、このカクテルにミステリアスな魅力を与えていることは間違いないでしょう。