文明とは「文化的実体」である
ハーバード大学の政治学者サミュエル・P・ハンティントンは、著書『文明の衝突』(1996年)で世界的に知られる研究者です。彼によれば、文明とは文化的実体(cultural entity)です。つまり、文明は単なる国家や政治体制ではなく、共通の文化的特徴によって結びついた人間の集団を指す概念なのです。
文明の目に見える要素
文明の姿は、さまざまな具体的な形として現れます。ハンティントンが挙げた主な可視的要素は次の通りです。
- 言語
- 宗教
- 社会的習慣
- 音楽
- 芸術
これらの要素は、それぞれの文明が持つ独自性を外部から識別できるようにする「顔」とも言えるものです。
文明の核心は共有された価値観
しかし、こうした表面的な要素だけが文明の本質ではありません。ハンティントンにとって文明の中心にあるのは、その文明に属する人々が共有する価値観の集合です。言語や宗教といった外的な表現も、この深層にある価値観から生まれていると考えられます。
『文明の衝突』との関連
この文明観に基づき、ハンティントンは冷戦後の世界を西洋、東方正教会圏、イスラム圏、中国圏など複数の文明圏へと分類しました。そして、今後の国際紛争の多くはイデオロギーや経済ではなく、文明と文明の境界線上で起こると予測したのです。彼の定義は、文化とアイデンティティが国際政治を左右する現代世界を理解するうえで、今なお重要な視点を提供しています。