ホメロスの叙事詩『オデュッセイア』において、英雄オデュッセウス(ラテン語名:ユリシーズ)を最も苦しめた存在といえば、海神ポセイドンです。しかし、実は彼を襲った災難のすべてがポセイドンの仕業だったわけではありません。ここでは、物語の中で誰が何を理由にユリシーズを罰したのかを整理して解説します。
風の袋を開けたのは船員たちだった
トロイア戦争からの帰還の途上、オデュッセウスは風の神アイオロスから、逆風をすべて詰め込んだ革袋を受け取ります。このおかげで順風だけを利用でき、故郷イタケーまであと一歩というところまで迫りました。
ところが、そこで乗組員の一人が「袋の中には金銀の宝物が隠されているに違いない」と考え、船長が眠っている間に袋を開けてしまったのです。すると解放された暴風が船を吹き戻し、艦隊は再び嵐に飲み込まれて壊滅し、オデュッセウスの船だけがかろうじて残りました。
つまり、この場面での致命的な嵐はポセイドンが引き起こしたものではなく、船員たち自身の好奇心と強欲がもたらした悲劇だったのです。
では、ポセイドンの怒りの原因は?
とはいえ、ポセイドンがオデュッセウスを敵視していたのは事実です。その発端となったのは、一つ目の巨人キュクロプス・ポリュペモスとの事件でした。オデュッセウスがポリュペモスの唯一の目を潰して脱出に成功したことで、「息子を傷つけられた」と激怒したポセイドンは、以後、彼の帰還の旅を執拗に妨害するようになります。
最後の裁きを下したのはゼウス
さらに物語の終盤では、太陽神ヘリオスの聖なる牛を食べてしまった乗組員たちへの罰として、主神ゼウスが雷霆(らいせい)で船を撃ち沈めます。この一撃により、オデュッセウスを除く乗員は全員が命を落としました。
まとめ:罰したのは誰なのか
「ポセイドンがユリシーズを罰した」という印象は強いものの、帰還の旅で起きた悲劇には複数の要因がありました。風の袋を開けたのは船員たちであり、船を沈めたのはゼウス、そしてポセイドンの恨みは息子ポリュペモスへの報復だったのです。神々の怒りと人間の過ちが絡み合う構図こそ、『オデュッセイア』の魅力の一つといえるでしょう。