現存する最古のコイン(硬貨)は、紀元前7世紀頃に現在のトルコ西部に位置していたリディア王国で鋳造されたと考えられています。
世界初の硬貨が生まれたリディア王国
リディアは小アジア(アナトリア半島)西部、エーゲ海沿岸に近い豊かな地域を支配していた古代王国です。この地方にはパクトロス川流域に天然の砂金が豊富に産出され、金属そのものの重量をもって価値とする取引が古くから行われていました。
「エレクトラム」製の初期硬貨
世界最初期のコインは、金と銀が自然に混ざった合金「エレクトラム(琥珀金)」で作られました。表面にはライオンなどの動物の紋章が打たれ、裏面には打刻の際にできたくぼみが残っています。この官方の刻印こそが、金属片を単なる素材ではなく「通貨」たらしめる決定的な要素でした。刻印によって重量と品位が保証されたことで、誰もが安心して取引に使えるようになったのです。
クロイソス王と金銀貨の登場
リディア最盛期の王として名高いクロイソス王(在位:紀元前560年頃〜同546年頃)の時代には、純金貨と純銀貨が分離して発行されるようになりました。これらは「クロイセイド」と呼ばれ、一定の規格に基づいて鋳造された本格的な貨幣体系の始まりとされています。
硬貨の発明がもたらしたもの
リディアで誕生した硬貨という仕組みは、ギリシャの各ポリスへと急速に広まり、商業活動を飛躍的に活発化させました。「お金」という概念が人類の歴史に定着した原点が、まさに紀元前7世紀の小アジアにあったのです。