カンブリア紀の1日は本当に短かったのか?
結論から言えば、カンブリア紀(約5億4000万年前〜約4億8500万年前)の1日は現在よりも短く、およそ21時間前後だったと考えられています。推定手法によって多少の幅はあるものの、20.6時間〜22時間程度という値は、多くの科学的証拠と整合的です。
地球の自転速度は誕生以来ずっと一定だったわけではなく、長い地質学的スケールで見ると着実に遅くなってきました。「昔の1日は今より短い」というのは単なる仮説ではなく、複数の独立した証拠によって裏付けられた事実なのです。
地球の自転はなぜ遅くなるのか?
その鍵を握るのが潮汐摩擦(たいしつまさつ)です。
月の重力は地球の海面を引っ張り、満ち引きを引き起こします。このとき海水は地球の自転に対してわずかに遅れて動くため、海底との摩擦などを通じて自転エネルギーが少しずつ失われます。その結果、地球の自転は100年あたり約1.8ミリ秒ずつ遅くなっています。
一見するとごくわずかな変化ですが、5億年という途方もない時間の中では積み重なり、大きな差を生み出します。また、角運動量保存の法則により、地球が失った回転の運動量は月へ受け渡されるため、月は現在も年に約3.8cmずつ地球から遠ざかっています。レーザー測距による観測でも、この現象は実際に確認されています。
どうやって過去の1日の長さを知るのか?
1. 化石サンゴの成長線
古生代のサンゴや貝類は、日々の成長リズムを殻や骨格に記録しています。成長線を数えることで「1年=何日だったか」を読み取ることができます。デボン紀のサンゴの解析では、1年が約400日前後だったことが示されており、これは1日が約21.9時間だったことを意味します。さらに古いカンブリア紀であれば、1年の日数はそれ以上に多かったと推定されます。
2. 潮汐リズマイト(堆積縞)
干満の繰り返しによって形成される薄い堆積の縞模様「リズマイト」は、太古の潮汐サイクルをそのまま記録した天然のタイムスタンプです。こうした地層の解析からも、過去の1日が現在より短かったことが裏付けられています。
3. 天文学・地球物理学に基づく計算
月の軌道変化や地球内部の性質を組み込んだ数値モデルからも、同様の結果が導き出されています。
短い1日は生命にどんな影響を与えた?
カンブリア紀は、動物の種類が爆発的に増加した「カンブリア爆発」の時代として知られています。昼夜のサイクルが現在より短かったことは、生物の体内時計や光合成のリズムにも影響を与えていたと考えられます。
また、当時の月は現在より地球に近く、空には大きく見え、潮の満ち引きも現在よりはるかに激しかったと推定されています。
まとめ
カンブリア紀の1日が20.6時間前後(約21時間程度)だったというのは、荒唐無稽な話ではなく、潮汐摩擦による地球の自転減速を示す確固たる科学的証拠に基づいた結論です。地球の自転は今後も少しずつ遅くなり続け、遥かな未来には1日が24時間より長くなっていくでしょう。