1066年にイングランドで繰り広げられたヘイスティングスの戦いは、ノルマンディー公ギヨーム(後の征服王ウィリアム)とイングランド王ハロルド・ゴドウィンソンが覇権をかけた中世史における転換点となった戦いです。
一見すると騎馬民族らしいイメージのあるノルマン軍ですが、興味深いことに、この日の戦闘は主に徒歩で戦われました。両軍とも、馬に乗ったまま敵陣へ突撃する騎兵戦術は用いなかったのです。
それでも馬が果たした重要な役割
しかし、戦場で突撃しなかったからといって、馬の価値がなかったわけではありません。むしろ両軍とも、馬を後方支援の中核として活用していました。
- 装備品や物資の運搬: 武器、食料、その他の補給品を戦場まで運ぶ手段として馬は不可欠でした。
- 木材の輸送: センラック・ヒル(センラクの丘)に陣取る自軍の周囲に防御柵(パリセード)を築くための木材を運搬しました。
中世の戦争では、重い資材や物資をどれだけ迅速に前線へ届けられるかが、防衛態勢の構築ひいては勝敗を左右する重要な要素でした。ヘイスティングスにおいても、馬は前線で剣を振るうことこそなかったものの、兵士たちが戦闘に集中できるよう陣地の構築と補給を支える、縁の下の力持ちとして欠かせない存在だったのです。