はじめに
中世ヨーロッパで行われた十字軍には、多くの人々が参加しました。しかし、彼らが一様に「十字軍兵士」と呼ばれていたわけではありません。時代、地域、そして呼ぶ側の立場によって、実にさまざまな名称が使われていました。この記事では、十字軍の参加者に与えられた主な7つの名称とその由来について詳しく解説します。
1. クルセイダー(十字軍戦士)
最も広く知られているのが「クルセイダー(Crusader)」という呼び名です。これはラテン語の「crux(十字架)」に由来する言葉で、日本語では「十字軍戦士」と訳されます。彼らは衣服や鎧に十字架の紋章を掲げていたことから、「十字架の兵士」や「十字架の騎士」とも呼ばれていました。
2. フランク人(Franks)
イスラム圏の人々をはじめとする非西洋世界では、ヨーロッパから来た十字軍戦士を「フランク人」と呼ぶことが一般的でした。この言葉は、中世初期にガリア(現在のフランス)を征服し、フランク王国を築いたゲルマン系部族に由来します。やがて「フランク」は西欧人全般を指す言葉へと広がり、十字軍の参加者にも用いられるようになりました。
3. ラテン人(Latins)
ビザンツ帝国や東地中海地域では、十字軍戦士は「ラテン人」と呼ばれました。この名称は、西方教会(ローマ・カトリック)に属する西欧の十字軍と、ビザンツ帝国やレヴァント地方の東方正教会のキリスト教徒との間にある宗教的・文化的な違いを強調するものでした。
4. ウートルメールの騎士(Outremer Knights)
レヴァント地方(東地中海沿岸)に建設された十字軍国家に定住した戦士たちは、「ウートルメールの騎士」と呼ばれました。「ウートルメール(Outremer)」とはフランス語で「海の向こう」を意味し、ヨーロッパの外側に征服された土地を指します。彼らはエルサレム王国、トリポリ伯国、アンティオキア公国などの地域に領土を持ち、独自の封建社会を築き上げました。
5. 巡礼者(Pilgrims)
多くの十字軍参加者にとって、遠征は宗教的な献身の表れであり、一種の巡礼でもありました。彼らは、キリスト教の大義のために戦い、聖地をイスラム勢力から解放することは敬虔な行為であり、霊的な報酬をもたらすと信じていたのです。
6. 聖なる戦士(Holy Warriors)
十字軍が持つ宗教的な性格から、参加者は「聖なる戦士」や「キリストの戦士」とも呼ばれました。彼ら自身、キリスト教世界を守り、聖地への道を確保するための正義の聖戦に身を投じていると自認していました。
7. 十字架を負う者(Cross-Bearers)
十字軍の象徴として十字架が目立つように掲げられたことから、参加者が「十字架を負う者」や「十字架の人々」と呼ばれることもありました。
まとめ
このように、十字軍の参加者を指す名称は非常に多岐にわたり、しかも互いに排他的なものではありませんでした。文脈や地域によって異なる呼び名が使い分けられており、それは当時の地中海世界における複雑な宗教的・文化的関係を今に伝えるものです。