ラムセス2世の遺体は、古代エジプトで死者を来世へ備えさせるために行われていた「ミイラ製作」と呼ばれる高度な保存処理によって守られました。この工程では、内臓の摘出、天然の防腐剤による処理、亜麻布での包帯巻きなどが、宗教的な儀礼とともに慎重に行われました。ここでは、ラムセス2世のミイラ製作に関わる主な工程を7つのステップで紹介します。
ミイラ製作の7つのステップ
1. 脳の摘出
長い金属製のフックを鼻孔から挿入し、脳を取り除きました。古代エジプト人は思考の座を心にあると考えていたため、脳は来世において不要とされていました。
2. 内臓の摘出
肺、肝臓、腸、胃といった内臓は、腹部に設けた切開口から丁寧に取り出されました。これらの器官は腐敗が早いため、別途保存されるのが一般的でした。
3. ナトロンによる乾燥・防腐処理
遺体はまず水で洗浄され、その後、水分を吸収して腐敗を防ぐため、ナトロン(天然炭酸ナトリウム)と塩の混合物で覆われました。ナトロンは数週間にわたって施され、遺体から可能な限り水分を取り除きました。
4. 洗浄と仕上げ処理
乾燥工程の後、遺体は再び洗い流され、腐敗を防ぐためにさまざまな樹脂、油、香料で処理されました。これにより、遺体には防菌性と芳香が与えられました。
5. 亜麻布による包帯巻き
頭部を含む全身が、亜麻布の包帯で几帳面に巻かれました。亜麻は遺体の保存と保護に適した自然の特性を持っていたため選ばれたのです。また、来世での守りを願うお守り(アミュレット)や護符が、包帯の層の間に挟み込まれました。
6. 最後の密封
遺体全体には熱した樹脂やタールが塗られ、包帯が密封されるとともに、湿気からのさらなる保護が加えられました。頭部や顔には、来世でも故人の姿と同一性を保てるように、仮面や肖像が施されることもありました。
7. 埋葬
ミイラとなったラムセス2世は豪華な棺に納められ、来世への旅立ちに必要とされた貴重な副葬品や宝物とともに、テーベ西岸の王家の谷にある壮大な墓に埋葬されました。
数千年を超えて残されたラムセス2世の遺体
ミイラ製作の精緻な工程と使用された材料は、ラムセス2世の遺体を数千年もの間守り続ける上で決定的な役割を果たしました。
ラムセス2世は紀元前1213年頃、90歳前後で亡くなったと考えられています。彼のミイラは1881年、王家の墓所の隠し場所(DB320として知られる遺体安置所)で発見され、その後カイロに運ばれました。1970年代にはフランスで科学的な保存修復処理も受けており、現在はカイロのエジプト文明国立博物館に収蔵され、一般にも公開されています。
こうして奇跡的に現代まで伝えられた王の遺体は、古代エジプトの文化、歴史、そして葬送習慣を研究する上で、かけがえのない貴重な資料となっているのです。