乾燥農法(ドライファーミング)とは、降雨が少ない地域で灌漑にほとんど頼らず、土壌に蓄えた水分を上手に活かしながら作物を育てる農業手法です。この農法の歴史は非常に古く、その起源は人類の農耕文化の始まりと深く結びついています。
最古の証拠は新石器時代・紀元前8000年頃
乾燥農法が行われていたことを示す最も古い証拠は、新石器時代にあたる紀元前8000年頃にさかのぼります。当時の中東や北アフリカでは雨量がきわめて少なかったため、人々は灌漑設備に依存するのではなく、畑の土壌から水分が蒸発するのを防ぎ、限られた雨水を最大限に活かす耕作技術を発達させました。これが乾燥農法の始まりと考えられています。
紀元前3000年頃には世界各地へ拡大
紀元前3000年頃になると、乾燥農法は中東からヨーロッパやアジアへと広がり、さらにアメリカ大陸でも同様の農法が実践されるようになりました。それぞれの地域の気候や土壌に合わせて工夫が重ねられ、乾燥地帯における食料生産を支える重要な技術として定着していきました。
20世紀まで続いた主流の農業形態
その後長い間、乾燥農法は世界の多くの地域で農業の中心であり続けました。しかし20世紀に入ると、ダム建設やポンプ技術の進歩によって灌漑農業が急速に普及し、乾燥農法はその主流の座を譲ることになります。安定した水の供給が可能になったことで、より収量の高い灌漑農業へと移行する地域が増えていったのです。
現代でも息づく乾燥農法
とはいえ、乾燥農法が過去のものになったわけではありません。水資源が乏しい地域や、灌漑コストが高すぎて採算が合わない地域では、今なお乾燥農法が実践されています。近年は気候変動による水不足への懸念が高まっており、持続可能な農業の手法として、乾燥農法が改めて注目を集めています。