中世のエールは、主に麦芽(発芽させた大麦)から作られていました。ただし、大麦以外にも小麦、オート麦、ライ麦などの穀物が使われることもありました。
中世のエールの製造工程
まず「製麦」と呼ばれる工程では、穀物を水に浸して発芽させ、その後、窯で乾燥させて麦芽を作ります。乾燥した麦芽は粉砕され、お湯と混ぜ合わせて「マッシュ(糖化液)」がつくられ、これを冷まします。
冷めたマッシュに酵母を加えると発酵が始まり、この過程には数日かかりました。こうしてでき上がったエールは、保存性が低かったため、通常は数週間以内に飲み切られていました。
現代のビールとの違い
中世のエールのアルコール度数はさまざまでしたが、一般的に現代のビールより弱かったとされています。これは、当時使われていた酵母が、糖をアルコールへ変換する効率が低かったためです。
風味にも違いがありました。中世のエールは現代のビールに比べて酸味が強く、苦みは控えめでした。これは、ホップの使い方が現代とは異なっていたこと、またエールが煮沸されないことが多かったためです。
中世社会におけるエールの役割
中世のエールと現代のビールには違いがあるものの、どちらも社会において重要な役割を果たしてきました。エールは身分を問わずあらゆる階級の人々に親しまれた人気の飲み物であり、労働への報酬など支払いの手段として使われることも珍しくありませんでした。
さらに、エールは宗教的な儀式にも欠かせない存在であり、祝祭日や特別な行事を祝う際にも振る舞われるなど、中世の人々の生活に深く根ざした飲み物だったのです。