パックス・モンゴリカとは何か
パックス・モンゴリカ(Pax Mongolica)とは、13世紀にモンゴル帝国の支配下でアジアの広範な地域にもたらされた、相対的な平和、交易の活発化、そして繁栄の時代を指す歴史用語です。ローマ帝国の「パックス・ロマーナ」になぞらえて名付けられたこの時代には、広大な領土が単一の権力のもとに統一されたことで、盗賊や戦乱の脅威が減少し、シルクロードを通じた東西間の商業活動がかつてないほど安全かつ盛んになりました。
始まりと終わり
パックス・モンゴリカの始まりは、一般に13世紀初頭のホラズム・シャー朝(ホラズム帝国)の征服とされています。チンギス・ハーン率いるモンゴル軍が中央アジアを平定したことで、東は中国から西は中近東に至るまでの広大な地域がモンゴルの支配下に入り、安定した秩序が確立されました。
一方、その終焉は13世紀後半に勃発した「トゥルイ家内乱(トゥルイ継承戦争)」によってもたらされました。フビライ・ハーンとその弟アリクブケとの間で帝位継承をめぐる激しい抗争が起こると、モンゴル帝国は分裂へと向かい、統一された支配体制による平和と安全保障が崩壊していきました。
続いた期間は約60~70年
以上のことから、パックス・モンゴリカはおよそ60年から70年程度続いたと考えることができます。半世紀余りの期間ではありますが、この短い時代にユーラシア大陸を横断する人、物、文化、技術、宗教の交流が大きく進み、マルコ・ポーロのような旅行者たちが東西を行き来できるようになったことは、世界史全体に大きな影響を与えました。