インカ帝国は、南北アメリカ大陸におけるコロンブス到来以前の文明として最大規模を誇った帝国です。アンデス山脈を中心に栄え、最盛期には200万平方キロメートルを超える広大な領土を支配していました。
インカ帝国の領土範囲
その領域は、現在のエクアドル、ペルー、ボリビア、チリ、アルゼンチンの一部に加え、コロンビア南部にも及びました。乾燥した太平洋沿岸から、標高6,000m級のアンデス山脈、さらに東側のアマゾン盆地の縁部まで、極めて多様な気候帯と地形を包含する巨大国家でした。
「タワンティンスーユ」— 四つの邦からなる帝国
インカ帝国は自らを「タワンティンスーユ(四つの統べる地域)」と呼んでいました。首都クスコを中心に、北西部のチンチャスーユ、南西部のクンティスーユ、北東部のアンティスーユ、南東部のコジャスーユという4つの行政区域で構成されていたのです。
広大な領土を支えた高度な統治技術
推定人口は1,000万人前後に達したともいわれます。総延長約4万kmに及ぶ道路網「インカ道」、精密な石積み技術、結び目で情報を記録する「キープ」と呼ばれる紐の記録法などを駆使し、文字を持たないながらも広大な領土を効率的に統治しました。この卓越した組織力こそが、インカ帝国をアメリカ大陸史上最大の帝国へと押し上げた要因といえます。