「上流階級」とひと口に言っても、その定義や構成は国によって大きく異なります。歴史や文化、社会制度の違いが、富裕層のあり方に色濃く反映されているのです。ここでは、アメリカ、イギリス、カナダという3つの国における上流階級の特徴を、それぞれの類型に分けて詳しく見ていきましょう。
アメリカの上流階級
アメリカには世襲的な貴族制度が存在しないため、上流階級は富の由来や社会的知名度によって分類されるのが一般的です。
オールドマネー(旧家・由緒ある富)
オールドマネーとは、何世代にもわたって富を受け継いできた一族を指します。不動産や遺産を通じて財産が守られ、マンハッタンのアッパー・イースト・サイド、ビバリーヒルズ、パームビーチといった伝統的な高級住宅地に居住することが多いのが特徴です。派手な振る舞いを好まず、慈善活動(フィランソロピー)や幅広い社会的ネットワークを重視する点が、この階層の大きな特色といえます。
ニューマネー(新興富裕層)
ニューマネーは、起業やビジネスの成功などによって近年短期間で富を築いた人々です。出自は多岐にわたりますが、成功への強い欲求と贅沢への志向を共通して持っています。成功を示す豪華な生活スタイルを隠さず、目立つ消費を厭わない傾向があるため、伝統を重んじるオールドマネーの家庭からは「洗練さに欠ける」と見られることもあります。
セレブリティ(著名人)
俳優、ミュージシャン、スポーツ選手など、名声と富を同時に手にした公衆の人物も、現代アメリカの上流階級を構成する重要なグループです。膨大なファンを抱え、その影響力を武器に高額な出演料や企業との契約(エンドースメント)を獲得できる一方で、常に世間の注目と批評にさらされるというリスクも伴います。
イギリスの上流階級
イギリスでは、長い歴史を持つ身分制度の名残が今も社会に根付いており、上流階級の区分はより明確です。
貴族(アリストクラシー)
公爵、伯爵、男爵などの爵位を持つ貴族階級です。多くは中世以来の大地主の末裔であり、称号が世代から世代へと受け継がれてきました。特権と高い社会的地位の象徴として、今なおイギリス社会において特別な存在感を保っています。
地主ジェントリ(ランデッド・ジェントリー)
爵位こそ持たないものの、広大な土地を所有する富裕な地主階級です。土地の経営や狩猟などの田園生活を中心としたライフスタイルを共有しており、貴族よりも伝統的で保守的だと見られることが多い層です。
アッパーミドルクラス
医師、弁護士、会計士などの専門職や、企業のオーナー、経営幹部によって構成されます。高度な教育を受け、高収入を得ている点が特徴で、野心にあふれ、社会的な上昇志向を持つ人々が多い階層です。
カナダの上流階級
多民族国家であるカナダでは、入植者の子孫か移民かという出身の違いが、上流階級の区分に反映されています。
オールドストック・カナディアン(建国期からの住民)
ヨーロッパからの初期入植者の子孫にあたる人々です。プロテスタントで英語話者が多く、強い国民意識を持つ傾向があります。政治、ビジネス、学術界などで活躍し、カナダ社会の中核を担ってきた伝統的なエリート層です。
ニュー・カナディアン(新移民)
世界各国からカナダへ移り住んだ移民たちです。出身背景はさまざまですが、新しい祖国での成功を強く望む点で共通しています。起業精神にあふれ、勤勉でリスクを恐れない行動力によって、一代で社会的地位を築き上げる人も少なくありません。
アッパーミドルクラス
イギリスと同様、医師、弁護士、会計士などの専門職やビジネスオーナー、管理職がこの層を形成します。良好な教育と高水準の所得を備え、さらなる出世と生活向上を目指す、向上心のある階層とされています。
まとめ
上流階級の姿は、国の歴史と社会構造を映す鏡です。アメリカでは富の新旧と知名度が、イギリスでは世襲の爵位と土地所有が、そしてカナダでは入植の歴史と移民の背景が、それぞれ階層を分ける重要な要素となっています。どの国においても、教育・収入・社会的ネットワークが上流階級を支える共通の基盤であることは、興味深い共通点といえるでしょう。