考古学的発見

中国・賈湖遺跡の亀甲に刻まれた未解読の記号 ― 甲骨文字に2000年先行する新石器時代の「原文字」か

中国東部、現在の河南省では、100か所以上の先史時代の遺跡が発見されており、これらは総称して裴李崗(はいりこう)文化と呼ばれています。この文化は紀元前7000年から同5000年にかけてこの地域で栄え、土器を生産した中国最古級の文化の一つです。名称は、1977年に最初に発見された集落のあった裴李崗鎮に由来します。

裴李崗文化と賈湖遺跡

その少し南に位置する賈湖(かこ)でも、新石器時代の遺跡が発見されました。集落間に多くの類似点が見られることから、一部の研究者は賈湖を裴李崗文化の一部とみなしています。しかし一方で、両者の差異は大きく、別個の文化として扱うべきだと主張する研究者もいます。

その根拠の一つが、稲作の痕跡が確認されているのが全遺跡の中で賈湖だけだという点です。実際、賈湖は裴李崗の諸集落よりも数世紀早く始まっています。

中国・賈湖遺跡の亀甲に刻まれた未解読の記号 ― 甲骨文字に2000年先行する新石器時代の「原文字」か

亀甲に刻まれた謎の記号

しかし、賈湖を特別な存在にしているのは、もう一つの驚くべき発見です。発掘調査では、24基の墓から人骨とともに埋葬された複数の亀甲が出土しました。注目すべきは、その表面に刻まれた記号です。年代は紀元前6600年から6200年とされ、メソポタミアで最初に文字の形が現れるよりも2000年以上も前にさかのぼります。

確認されたのは合計16種類の異なる記号ですが、その意味は今日まで解読されていません。後の商王朝(紀元前1700~1100年)で用いられた甲骨文字との類似性を指摘する専門家もいます。他方、これらは「原文字」、すなわち文字そのものとまでは言えない記号であり、文字体系発展の起源となった可能性があると捉える研究者もいます。

中国・賈湖遺跡の亀甲に刻まれた未解読の記号 ― 甲骨文字に2000年先行する新石器時代の「原文字」か

甲骨文字との関連はあるのか

甲骨文字とは、動物の肩甲骨や亀甲に刻まれた20万点以上の銘文のことで、古代中国文字としては最古のコーパスとされています。その解読を通じて、商王朝の完全な系譜など、極めて重要な歴史情報が明らかになりました。

例えば、甲骨文字における「目」や「日」を表す記号は、賈湖の記号の一つに由来するのではないかと考えられています。また、比較研究から数字の「8」と「20」の対応関係も指摘されています。ただし、これらはあくまで仮説であり、すべての歴史家が認めているわけではありません。賈湖の記号から甲骨文字までには5000年以上の時間の隔たりがあり、両者をつなぐ関連性を見出すのは容易ではないからです。

中国・賈湖遺跡の亀甲に刻まれた未解読の記号 ― 甲骨文字に2000年先行する新石器時代の「原文字」か

小石が示すシャーマニズム儀礼の可能性

賈湖の亀甲とともに、小さな石をまとめて納めた状態の多数の小石群も出土しました。2003年の発見発表の際、研究者たちは、亀甲にもともとこれらの小石が収められており、シャーマンが儀礼で振り鳴らす一種のラトル(鳴り器)として使われていたのではないかと提唱しました。

さらなる驚き ― 世界最古級の骨笛

そして賈湖は、考古学者たちにもう一つのサプライズを用意していました。亀甲が出土したのと同じ墓から、今日知られている最古の楽器とされる骨笛が見つかったのです。未解読の記号、儀礼の道具、そして音楽 ― 賈湖遺跡は、文字と文明の夜明けを今に伝える貴重な遺跡といえるでしょう。