考古学的発見

タム・ファ・トー洞窟(カオ・グー)|蛇山に眠るドヴァーラヴァティー期の涅槃仏

地形

洞窟(岩陰住居)

概況

石灰岩からなる「蛇山(カオ・グー)」に位置する洞窟です。「カオ・ラット・クルアイ」と呼ばれる一帯にあり、隠者洞窟(タム・ルーシー)の西約260メートルにあたります。洞窟は地上から約75メートルの高さにあり、入口の幅は約6.5メートル、南東方向に開いています。奥行きは約25.3メートルです。

現在では、山麓から洞窟入口までセメント製の階段が設けられ、洞窟前および内部にはセメント床が敷かれています。また、洞窟内の仏像台座もセメントで造られています。

海抜高度

52メートル

水系

メークロン川は蛇山の東約4キロメートルを流れています。また、ノンヤイ運河(クローン・ノン・ヤイ)は、蛇山から北東へ約3.3キロメートル、東へ約1.1キロメートルの位置にあります。

地質条件

「蛇山(カオ・グー)」の項を参照してください。

考古学的時代

歴史時代

時代/文化

ドヴァーラヴァティー期、アユタヤ期、ラッタナーコーシン期(バンコク期)

考古学的年代

仏暦11〜16世紀(西暦1000〜1600年頃)、仏暦22〜24世紀

遺跡の種類

宗教関連遺跡、洞窟美術遺跡

遺跡の概要

洞窟の南壁には、ドヴァーラヴァティー期の大型涅槃仏像(全長8.75メートル、高さ1.85メートル)が安置され、頭部は洞窟入口の方を向いています。仏頭の背後には円形の光背板があり、その上方には群集する神々(テープ・チュムヌム)と樹木の漆喰像が施されています。樹木像には裾に布が掛けられ、幹には飾り輪が巻かれています。葉の形状はいずれも沙羅(サラ)の葉で表現されており、これは涅槃への到達を象徴するものです。仏像の周囲には7体の神々が取り囲み、第1体は蓮華を持ち、第2体は拝跪する神像(テープ・パノム)、第3体は花環を持つ姿が描かれます。第4〜7体については、頭部のみが現存しています。

洞窟の北壁には4体の弟子像があり、そのうちの1体は歩行あるいは飛翔する姿を示し、両腕を交差させて敬礼の印(スワスディカー・ムードラー)を結んでいます。この表現は、サラブリー県カーンコーイ郡のタム・プラ・ボーディサットのヴィシュヌ像、さらにはスリランカ・ポロンナルワ美術に見られる「目やぎ(目の供養)」の立像の姿勢とも共通しています。同じ地域に涅槃の姿をとる仏像が存在することも注目に値します(Sakchai Saising 2004:204)。

涅槃仏が洞窟入口を向いて安置され、その上方に神々が集うという構図は、インド・アジャンター石窟群第26窟の図像ときわめて類似しています(Sakchai Saising 2004:204; Piriya Krairiksh 2010)。制作年代については、仏暦11世紀説(Piriya Krairiksh 2010)と仏暦12世紀説(芸術局考古学部門 1995)があります。また、様式面からの検討により、その後のアユタヤ期あるいはラッタナーコーシン期に加筆・修復が行われた可能性も指摘されています(Sakchai Saising 2004:204)。このことから、ドヴァーラヴァティーの上座部仏教が、アジャンターに代表される大乗仏教の図像学を受容し、自らの思想体系へと適応させていたことが示唆され、その思想的伝統は仏暦13世紀後半まで存続していたと考えられます(Piriya Krairiksh 2010)。

さらに、洞窟内からは赤砂岩製の仏像が多数発見されており、洞窟入口付近には瓦葺き屋根の構造や石積み壁の痕跡が残っています。これらはアユタヤ期の遺物および建築と推定されています。