考古学的発見

ティンペット洞窟 ― タイ南部チュムポーンの先史時代の岩穴遺跡

地形と立地

ティンペット洞窟は、楕円形をした小さな石灰岩の丘「カオ・ティンペット」の東側山麓に位置しています。この丘は北東から南西方向に約300メートル、幅約150メートルにわたって連なり、タイ湾の海岸から西へ約18キロメートルの内陸にあります。丘の西側約150メートルのところにはクロン・ティンペット(運河)が流れ、周辺の田畑を潤しています。

洞窟の構造

洞窟には南北に2つの入口があり、両者は約5メートルしか離れていませんが、いずれも同じ大広間へと通じています。広間は基本的に1つですが、内部には僧侶たちが瞑想・修行の場として使ってきた小部屋や岩のくぼみがいくつもあり、大量のコウモリが生息しています。また、2つの入口のあいだには、レンガ積みで造られた簡易トイレが設けられています。

洞窟の中央部には崩落した岩には崩落した岩塊の堆積と湧水池があります。村人たちは湧水の涌き出る地点をセメントで囲み、「聖なる井戸」として大切に守ってきました。さらにコウモリの集まる池の上には帆布が張られています。こうした改変により、大広間は入口に対応して「北の部屋」と「南の部屋」の2つの空間に分けられるようになりました。

北側の部屋

北側の部屋は、現在では僧侶の住居として使われており、仏像が安置されています。傾斜のある洞窟の床はセメントで固められ、僧侶の日常生活に必要な道具や器物が置かれています。入口付近には薪を燃やすかまどが1基、セメント製の貯水槽が2基あります。長年の生活の結果、天井や壁面はかまどの煙で厚く黒く煤けています。

南側の部屋

南側の入口は細身で天井が高い形状が特徴です。入口付近にはレンガ積みのトイレがあります。南側の部屋は主に空き空間と瞑想用の小部屋からなり、床はセメントで仕上げられています。コウモリの糞がかなりの厚さで堆積しており、一部の入口には木製の扉が取り付けられ、閉じることができるようになっています。

山麓の環境

山麓一帯は村人たちの畑や、洞窟に暮らす僧侶たちの菜園として利用されています。場所によっては崩落した岩塊が散在し、石灰岩地域特有の景観を見せています。

基本データ

標高:海抜79メートル
水系:ター・セー運河、ター・セー川、バン・タライ運河
時代:先史時代(後期先史時代/新石器時代)
遺跡の種別:一時的な居住遺跡

地質

カオ・ティンペットは独立した石灰岩の山で、ラーチャブリー層群に属するペルム紀(約2億8600万年前~2億4500万年前)の岩石から構成されています(タイ鉱物資源局、2007年)。

考古学的意義

タイ芸術局が過去に行った調査(2022年)では、土器片145点をはじめとする先史時代の遺物が確認されました。出土した土器は低温で焼成された粗粒のものが多く、粘土に砂粒が混ぜ込まれています。このことから、この洞窟は先史時代の人類が季節的な滞在や狩猟活動の拠点として利用した、一時的な住居跡であったと考えられています。

一方、2013年にシリンドーン人類学センターが実施した洞窟内地表の調査では、遺物は検出されませんでした。これは、現代になって僧侶たちが居住し仏像を安置するようになったため地表が常に清掃されていることに加え、洞窟の床が傾斜したセメント張りであることも関係していると推察されます。