考古学的発見

信じられない発見:5億2000万年前の脳が化石になっていた

5億年以上も前の節足動物の化石から、脳の解剖学的構造の一部が発見されました。脳は極めて壊れやすい臓器でありながら、化石として保存されうることを証明する衝撃の発見です。

信じられない発見:5億2000万年前の脳が化石になっていた

光学顕微鏡下では、脳の痕跡は黒く観察されます。

覆された定説

古生物学者たちは長い間、「脳をはじめとする柔らかい臓器は化石にならない」と主張してきました。しかし数年前、3億年前のサメの脳の化石が発見され、この定説は次第に揺らぎ始めます。そして今回、学術誌『Current Biology』に掲載された7つの化石によって、この常識はついに決定的に覆されることになりました。これらの化石にはそれぞれ、保存された脳組織の一部が残っていたのです。

下の画像は、全長12cmで良好な保存状態にあるフシアンフイア・プロテンサ(Fuxianhuia protensa)の化石です。(写真提供:Xiaoya Ma/ロンドン自然史博物館)

信じられない発見:5億2000万年前の脳が化石になっていた

特殊な保存条件が必要だった

今回発見された化石は、中国南西部の澄江(チェンジャン)頁岩層から出土したもので、すべて同じ種であるFuxianhuia protensaに属します。これは約5億2000万年前のカンブリア紀に生息した節足動物で、体長4~15cmほどのエビのような姿で海底を這い回っていたと考えられています。

研究チームは走査型電子顕微鏡を用いて化石を分析し、各標本から間違いなく脳、あるいは少なくとも原始的な中枢神経系の痕跡を確認しました。脳は扁平化した炭素の膜として保存されており、一部の化石では微小な黄鉄鉱の結晶によって部分的に覆われていました。

研究者らは別の論文で、これらの臓器が例外的な形で保存された理由を探っています。最も妥当な説明は、地滑りなどの際にこれらの生物が突如、酸素の乏しい水に浸った泥の中へ一気に埋没し、腐敗も他の生物による捕食も免れたというものです。

信じられない発見:5億2000万年前の脳が化石になっていた

2つの脳の痕跡を重ね合わせたトレース図。Strausfeld et al./Current Biologyより。

厚い泥の圧力に耐えた脳

保存にはもうひとつ、大きな関門がありました。「ほとんどすべての脳が挫折するのが、分厚く重い泥の圧力への抵抗だ」と語るのは、研究の共著者であるニコラス・J・ストラウスフェルド(Nicholas J. Strausfeld)氏です。同氏は長年にわたり、脳が化石になりうると考える数少ない専門家の一人であり、その理論を嘲笑されてきた経験の持ち主でもあります。

F. protensaの脳が化石として残るためには、驚くほど高い密度を持っていた必要があります。実際、現生の節足動物の脳は、緻密な神経細胞と脂肪からなるネットワークで構成されており、十分に密度が高いのですが、こうした原始的な甲殻類の脳はさらに密度が高かったと考えられています。

「これらの前提条件が整えば、保存のプロセスが始まります。脳は全体の完全性を保ちながら、徐々に扁平化していき、やがて化石として残るのです」と研究者はまとめます。そして、少し皮肉めいた調子でこう締めくくっています。
「人間、特に科学者は、ついつい仮説を決めつけてしまうものです。しかし実のところ、科学の醍醐味とは、そうした思い込みを打ち砕けることにこそあるのです」