セバスティアン・ビスカイノが使用した航海用具
16世紀末から17世紀初頭にかけて活躍したスペインの探検家セバスティアン・ビスカイノは、1602年から1603年にかけてカリフォルニア沿岸を調査したことで知られています。大航海時代において、彼は複数の重要な航海用具を駆使して未知の海域を航行しました。ここでは、ビスカイノが使用した代表的な道具とその仕組みを紹介します。
アストロラーベ(天文観測儀)
アストロラーベは古代から使われてきた天体観測用の計器で、地平線上の天体の高度を測定し、緯度や経度を求めるために用いられました。円形の真鍮製の円盤の周囲には目盛りが刻まれ、中央には「アリダード」と呼ばれる可動式の照準腕が取り付けられています。アリダードは円盤の中心を軸に回転し、先端の照準器で天体を狙うことができます。照準器を天体に合わせた後、その位置に対応する目盛りを読み取ることで、天体の高度を正確に測定できました。
クロススタッフ(十字杖)
クロススタッフもまた、天体の高度を測るための古典的な天文器具です。棒状の杖に垂直な横木(クロスピース)が付いた構造で、横木は等分に区切られ、杖本体には角度の目盛りが付けられています。杖を垂直に持ち、横木を目標の天体に合わせることで高度を測定します。天体の位置に対応する横木の区分を、杖の目盛りから読み取る仕組みです。
磁気コンパス(羅針盤)
磁気コンパスは、地球の磁場を利用して方位を知るための航法器具です。軸の上で自由に回転できる磁化された針で構成されており、針は地球の磁場に沿って自然に整列します。この針の向きから北・南・東・西という基本方位を判断することができ、海上で進路を維持するうえで欠かせない道具でした。
おもりと測深縄(リード・アンド・ライン)
おもりと測深縄は、水深を測るためのシンプルな道具です。おもりは紐に取り付けられた重りで、紐にはファゾム(尋)やフィート単位の目盛りが付けられています。おもりを水底に届くまで沈め、水面に対応する紐の目盛りを読み取ることで水深を測定しました。浅瀬や暗礁の有無を確認し、座礁を防ぐために不可欠な装備でした。
砂時計
砂時計は時間を測るための簡単な装置です。細い首で連結された2つのガラス球からなり、上部の球に砂が入れられ、下部の球は空になっています。砂時計をひっくり返すと、砂が上部から下部へ流れ落ち、その所要時間によって一定の時間を計ることができました。船上では船速の計算や当直勤務の交代などに広く活用されていました。
これらの道具はそれぞれ単独では完結しないものの、組み合わせて使用することで、ビスカイノのような探検家たちは正確な位置把握と安全な航行を実現しました。大航海時代の航海術を支えたこれらの器具は、近代的な計測機器の原型とも言える存在です。