北米南西部に暮らしていた先住民族「プエブロ人(Puebloans)」は、木材を使わずに独自の住居を築き上げたことで知られています。その最大の理由は、彼らが住んでいた地域に利用できる樹木がほとんど存在しなかったことです。
乾燥した環境が建築材を決めた
プエブロ人の居住域は、現在のニューメキシコ州やアリゾナ州などにあたる乾燥した高原・砂漠地帯でした。この地域は降雨が少なく、大規模な森林が育たないため、丸太や板材を大量に調達することが困難でした。そこで彼らは、身近に豊富にあった素材を活かした建築方法を発展させたのです。
主に使われた建材
1. アドベ(日干しレンガ)
粘土質の土と水、そしてわらなどを混ぜて成形し、太陽の下で乾燥させて作られる「アドベ」は、プエブロ建築の代名詞ともいえる素材です。熱をゆっくり吸収して放出する性質があり、昼夜の寒暖差が激しい砂漠気候において、室内温度を快適に保つ効果がありました。
2. 石材・砂岩
メサ・ヴェルデ(Mesa Verde)の断崖住居やチャコ・キャニオン(Chaco Canyon)の遺跡に見られるように、砂岩を切り出して積み上げた石造りの壁も広く用いられました。砂岩は地層として露出している場所が多く、加工もしやすかったため、耐久性のある多層住居の建設を可能にしました。
環境に適応した優れた建築文化
限られた資源の中で、プエブロ人は日干しレンガや石材を駆使し、夏は涼しく冬は暖かい、機能的で耐久性の高い集合住宅を完成させました。木材が手に入らないという制約は、むしろ彼ら独自の卓越した建築技術を生み出すきっかけとなったのです。こうした伝統的な建築様式は現代にも受け継がれ、タオス・プエブロなどは世界遺産として高く評価されています。