歴史上の人物

アラゴンのヨランダ(1379–1443)――シャルル7世を支えた影の実力者

アラゴンのヨランダ(1379–1443)――シャルル7世を支えた影の実力者

百年戦争でフランス王国の命運が揺らぐなか、表舞台の陰で大きな役割を果たした人物がいます。それがアラゴンのヨランダ(1379年–1443年)です。若き王太子シャルルの義母であり、アンジュー公ルイ2世の妻でもあった彼女は、並外れた政治感覚を持つ女性として知られています。

王太子シャルルを守った義母

フランスとイングランドの対立が深刻化するなか、ヨランダはいち早く王太子シャルルを保護下に置きました。彼女が所有するロワール渓谷の城々に王太子を迎え入れ、身辺の安全を確保したのです。さらに、自らの娘マリー・ダンジューをシャルルに嫁がせ、アンジュー家ゆかりの顧問たちを側近として配置しました。こうしてヨランダは、後に即位するシャルル7世の政治基盤を着実に固めていきます。

ブルターニュを離反させた外交手腕

外交の場でもヨランダの手際は見事でした。当時イングランドと同盟関係にあったブルターニュ公国を切り崩すため、彼女はアルテュール・ド・リシュモン(後のブルターニュ公アルテュール3世)の台頭を後押しします。この工作によってイングランド側の包囲網に亀裂が入り、フランス王党派にとって有利な情勢が生まれました。

ジャンヌ・ダルクへの全面的な支援

若きシャルル7世に最も近い助言者のひとりであったヨランダは、ジャンヌ・ダルクにも全面的な支援を与えたことで知られています。オルレアン包囲戦やランスでの戴冠式といった歴史的な転換点において、宮廷内の反対を抑えてジャンヌを王のもとへ送り出す後押しをしたのは、ヨランダとその一派だったとも語られています。

「黒幕」説をめぐる評価

一方で、ヨランダを単なる保護者ではなく「策略家」とみなす見方もあります。ジャンヌ・ダルクを政治的目的のために利用した存在だと捉える論者もおり、その実像は今なお謎に包まれています。とはいえ、分裂の危機にあったフランスを再統一へと導いたシャルル7世の成功の陰に、このアラゴン出身の女性の卓越した政治力があったことは、ほぼ間違いないでしょう。