歴史上の人物

エリザベス朝時代の職業一覧:人々はどんな仕事で暮らしていたのか?

エリザベス朝時代(1558年〜1603年)は、エリザベス1世がイングランドを統治した「黄金の時代」として知られています。この時代、人口の大多数は農村部で暮らし農業に従事していましたが、都市部では商業や手工業が大きく発展し、実に多彩な職業が生まれていました。多くの職人はギルド(同業組合)に所属し、徒弟制度を通じて技術を磨いていたのです。
ここでは、当時の人々が就くことのできた主な職業を、分野別にご紹介します。

農業

エリザベス朝時代のイングランドでは、人口の約8割が農村で暮らしており、農業は最も一般的な生業でした。

  • 農夫:自分の土地や借地で穀物や野菜を育てました。
  • 農場労働者:地主や農夫のもとで日雇い労働に従事しました。
  • 羊飼い:当時最大の輸出産業だった羊毛を支える重要な仕事でした。
  • 酪農家:牛乳、バター、チーズの生産を担いました。
  • 耕作夫:馬や牛に犂(すき)を引かせて畑を耕しました。
  • 刈り手:収穫期に穀物を刈り取る季節労働者です。

工芸・職人

都市や町では、ギルドに属する職人たちが様々な製品を作って生計を立てていました。

  • 鍛冶屋:農具や道具、蹄鉄などの鉄製品を作りました。
  • 大工:家屋や家具のほか、船の建造にも携わりました。
  • 樽職人:エールやワインの貯ワインの貯蔵に不可欠な樽を作る、需要の高い職業でした。
  • 石工:教会や建物の石造部分を担当しました。
  • 陶工:日常で使われる土器や陶器を製作しました。
  • 靴職人:手作業で靴を作り、修理も行いました。
  • 仕立て屋:身分に応じた服装を作る、人気のある職業でした。
  • 織物職人:羊毛や麻を布に織り上げました。

家庭内奉仕

貴族や富裕層の屋敷では、大勢の使用人が雇われていました。

  • 料理人:屋敷の台所を取り仕切りました。
  • 家政婦:家事全般の管理を担当しました。
  • メイド:掃除や給仕などの雑務を行いました。
  • 乳母:子供の世話をする女性使用人です。
  • 洗濯女:洗濯を専門とする仕事でした。
  • 執事:男性使用人の筆頭として屋敷を管理しました。
  • 下男:玄関での応対や給仕を担当しました。
  • 御者:馬車の操縦と馬の管理を行いました。

飲食業

町には人々の暮らしを支える飲食関連の店が並んでいました。

  • パン職人:主食であるパンを焼く、欠かせない存在でした。
  • 醸造業者:水が安全でなかった時代、エール(ビール)の醸造は重要な産業でした。
  • 肉屋:肉の販売と加工を行いました。
  • 魚屋:新鮮な魚や塩漬けなどの保存魚を売りました。
  • 食料品商:香辛料や乾物などを扱いました。
  • 宿屋の主人:旅人に宿と食事を提供しました。
  • 酒場の主人:庶民の社交場である酒場を経営しました。
  • ワイン商:輸入ワインを扱う、比較的裕福な商人でした。

商人

商業の発展により、様々な商品を扱う商人たちが活躍しました。

  • 布地商:羊毛や絹などの布地を販売しました。
  • 金細工師:装飾品や貨幣に関わる、高度な技術を持つ職業でした。
  • 服飾雑貨商:ボタンやリボン、帽子などの小物を売りました。
  • 鉄器商:釘や道具などの鉄製品を扱いました。
  • 商人:国内外で商品の売買を行いました。
  • 毛皮商:動物の毛皮を加工・販売しました。
  • 羊毛商:イングランド経済を支える羊毛を扱いました。

専門職

教育を受けた少数の人々は、知識や技能を活かした専門職に就くことができました。

  • 医師:大学で学ぶ必要がある、一部のエリート職業でした。
  • 弁護士:法務の専門職として地位を高めていきました。
  • 牧師:教区教会で宗教活動を担いました。
  • 学校教師:文法学校などで読み書きやラテン語を教えました。
  • 音楽家:宮廷や教会、劇場で演奏しました。
  • 画家:肖像画などの注文を受けて制作しました。
  • 詩人・作家:シェイクスピアの時代らしく、演劇や文学が大きく花開きました。

熟練労働

特殊な技術を要する職業も数多く存在しました。

  • 時計職人:精密な機械式時計を作る、高度な技術職でした。
  • 刃物職人:ナイフや剣、はさみなどの刃物を作りました。
  • 金細工師:貴金属細工の頂点とされる職業です。
  • 鉄砲鍛冶:火縄銃などの武器を作る軍需産業の職人でした。
  • 印刷業者:印刷術の普及とともに成長した、比較的新しい職業でした。
  • 造船職人:商船や軍艦を建造する重要な技術職でした。
  • 鞣し職人:動物の皮をなめして革に加工しました。

運輸

人や物を運ぶ仕事も、社会を支える大切な職業でした。

  • 舟頭:川や運河で舟を操縦しました。
  • 荷馬車運搬人:荷馬車で商品を運びました。
  • 御者:客を乗せた馬車を駆りました。
  • 渡し守:川の渡し場で人々を対岸へ運びました。
  • 馬丁:馬の世話や乗馬の補助を行いました。
  • 荷車引き:重い荷物を載せた荷車を引きました。

まとめ

エリザベス朝時代の職業は、身分や性別によって大きく制限されていたものの、農業から芸術まで実に幅広いものでした。特に演劇や文学の分野では、シェイクスピアに代表される才能が次々と現れ、後世に名を残すイギリス文化の黄金期を築き上げたのです。当時の職業の一つひとつに、時代の社会構造と人々の暮らしが色濃く反映されていると言えるでしょう。