歴史物語

スプーンの意外な歴史:古代エジプトから貴族の食卓まで

スプーンの意外な歴史:古代エジプトから貴族の食卓まで

毎日何気なく使っているスプーンには、実は驚くほど長い歴史があります。すでに古代エジプトの時代に使われていたことが確認されており、人類とともに歩んできた食器のひとつなのです。

古代ローマには2種類のスプーンがあった

古代ローマでは、用途の異なる2種類のスプーンが使い分けられていました。

ひとつは「コクレアール(cochlear)」と呼ばれるものです。スプーンを指す言葉は、ラテン語のコクレア(cochlea)、つまり「貝殻」に由来するとされます。このスプーンは液体状の料理や貝類、卵を食べるとき、さらに薬を飲ませるときにも用いられました。

もうひとつは「リグラ(ligula)」と呼ばれ、月桂樹の葉のような形をしていたといいます。その形状から、食べ物を突き刺して使われた可能性が高く、今日のスプーンというよりフォークの祖先ではないかと考える研究者もいます。

素材に表れた身分の差

ローマ時代のスプーンは多彩な素材で作られていました。最も一般的だったのは骨製ですが、ブロンズや銀で作られたものもあり、それらは明らかに最も裕福な家庭にのみ供給される特別な品でした。

中世の衰退と近代での復活

中世の大部分において、スプーンはほぼ常に木製で、食卓での使用は限られていました。再び脚光を浴びるのは、近代に入ってからのことです。

上流階級のステータスシンボルへ

近代になると、上流階級のあいだでスプーンは食卓に欠かせない必需品となりました。特にイングランドでは、スプーンに家名や頭文字(イニシャル)を刻む習慣が広まりました。

こうした名家の食卓で、金や銀のカトラリーを目にすることは決して珍しくありませんでした。スプーンは単なる食器ではなく、家の格式を示すステータスシンボルとなっていたのです。