オセアニアの歴史

『この世界の起源(マラナオ)』の物語で不可解だと感じたことは何ですか?

マラナオ神話「この世界の起源」とは

フィリピン・ミンダナオ島のラナオ湖周辺に暮らす民族マラナオに伝わる創世神話「この世界の起源(The Origin of This World)」は、陸地がまだ存在せず、海と空だけが広がっていた太古の世界から、大地や人間がどのように生まれたかを語る物語です。学校の文学教材としても頻繁に取り上げられ、「この神話を読んで疑問に思った点はどこか」という問いとともに学ばれることが多い作品です。

最も不可解な点――最初の人間を造ったのは誰なのか

この神話を読んだときに多くの人が抱く最大の謎は、人類の祖となる最初の人間を、誰が、どのようにして造り出したのかについて、物語の中に一切の言及がないという点です。

神話の前半では、天空の存在たちが力を合わせて海や大地を形作っていく過程が比較的丁寧に描かれています。ところが物語が人間の誕生の場面に差しかかると、説明は突如として途切れてしまいます。粘土から人間を形作る神や、植物から生まれる最初の人間など「創造の瞬間」が具体的に描かれる他の民族の神話と比べると、この欠落は際立って見えます。

なぜこの欠落が気になるのか

創世神話の本来の役割は、世界の成り立ちを説明するだけでなく、「私たちはどこから来たのか」という根源的な問いに答えることにあります。にもかかわらず、この物語は人類の始まりだけを語りの外に置いているように見えます。そのため、次のようなさまざまな推測が生まれます。

  • 最初の人間は自然発生的に現れたのか
  • 世界を造った存在たちが人間も創ったのに、あえて省略されたのか
  • 長い口承伝承の過程で、この部分だけが失われたのか

考えられる背景と解釈

この神話はもともと文字ではなく口頭で語り継がれてきたため、時代を経るうちに細部が変化したり脱落したりした可能性があります。また、マラナオ社会が後にイスラム教を受容した歴史を踏まえると、人間の創造は神(アッラー)のみがなし得る行為であるという信仰上の意識から、伝統的な神話の中で人間創造の場面が意識的に薄められた、という見方もできます。

まとめ

「この世界の起源(マラナオ)」において最も不可解なのは、世界の創造過程は比較的詳細に語られているのに、人類の祖となる最初の人間を造った存在については何も触れられていないことです。この「語られない空白」こそが、読者に強い疑問と豊かな想像の余地を残す、この神話ならではの特徴だといえるでしょう。