エジプトの地図を見ると、多くの人が不思議に思うことがあります。「下エジプト(Lower Egypt)」が国土の北側に位置し、「上エジプト(Upper Egypt)」が南側に位置しているのです。通常、「上」は北を、「下」は南を連想することが多いため、この命名は一見矛盾しているように感じられます。
ナイル川の流れが名前の由来
実は、この名称は地図上の上下ではなく、ナイル川の流れに基づいています。ナイル川はアフリカ大陸の奥地(南)から地中海(北)へ向かって流れています。川においては、水源に近い上流側を「上流(upper)」、海に近い下流側を「下流(lower)」と呼ぶのが地理学上の慣例です。そのため、ナイル川の上流にあたる南側が「上エジプト」、下流にあたる北側が「下エジプト」と呼ばれるようになりました。
古代エジプトの歴史的背景
古代エジプトでは、ナイル川流域の上流部にあたる南側の渓谷地帯を「上エジプト」、河口に広がる三角州(デルタ)地帯である北側を「下エジプト」として区別していました。紀元前3100年頃、上エジプトの王メネス(ナルメル王ともいわれます)が下エジプトを統合し、両地域がひとつの王国となりました。この歴史的な区分が、その後も名称として受け継がれ、現代に至っています。
まとめ
つまり、「上」「下」という言葉は方角を示すものではなく、ナイル川の上流・下流を表しています。川の流れを基準とした命名であるため、「上エジプト=南」「下エジプト=北」という、一見逆に見える配置が生まれたのです。