歯を磨く習慣は、食事と同じくらい古い
今日私たちが知っている形の歯ブラシは、18世紀にイギリスのニューゲート刑務所に収監されていたウィリアム・アディスによって考案されました。しかし、「歯をきれいにする」という行為そのものは、人類が食事を始めた頃から存在していたと考えられます。想像してみてください――マンモスの肉の筋が歯に挟まったまま一日中過ごすのは、どれほど不快なことでしょう。
ここでは道具の話は一旦脇に置き、主役である「歯磨き粉」に焦点を当ててみます。
古代エジプトと中国の歯磨き粉
古代エジプトでは、焼いて砕いた牛の蹄(ひづめ)、没薬(ミルラ)、卵の殻の粉末、そして軽石を混ぜ合わせて歯磨き粉を作っていました。それぞれの配合比率は不明ですが、指や小枝を使って歯をこすり磨いていたことが分かっています。また中国でも、複数の素材を組み合わせた混合物で歯を清掃していたことが知られています。
そして舞台を古代ローマへ移すと、この配合はさらなる完成度を極めることになります。

ローマ人の歯磨き粉――衛生から美容へ
ローマ人の歯磨き粉には研磨剤として、焼いて砕いた貝殻が使われていました。これは食べかすを「引き剥がす」ためのもので、さらにハチミツ、ワイン、そして口内を爽快にし口臭を防ぐ香草なども加えられていました。これで衛生面の役割は十分果たせるのですが、ローマ人は美容面にも妥協しませんでした。
尿で歯を白く?
思い出してほしいのですが、古代ローマでは洗濯業(フッロニカ)において、衣類を漂白するために尿が使われていました。これは尿に含まれるアンモニアの効果によるものです。そこで彼らは、歯を白くするために尿を歯磨き粉に加えることを思いついたのです。
そしてここで、ヒスパニア(現在のスペイン)が登場します。ガルムやオリーブオイル、セラーノハムといった恵まれた食生活ゆえだったのかは定かではありませんが、事実として、ローマの富裕層たちは歯磨き粉に使う尿は「ヒスパニア産」でなければならないとこだわったのです。
詩人カトゥルスが残した証言
古代ローマの詩人ガイウス・ウァレリウス・カトゥルスは、こんな皮肉たっぷりの一節を詩に残しています。
「ケルティベリアの国では、
男はみな自分の小便で毎朝
歯と赤い歯茎を磨くという。
だから君の歯があれほどピカピカなのは、
裏を返せば、君が尿まみれだということだ」
誰もが手に入る贅沢品ではない――庶民の代替品は?
しかし、こうしたグルメ級の歯磨き粉を誰もが楽しめたわけではありません。庶民の間では、より入手しやすい別の歯磨き粉も使われていました。それがこちら――善し悪しの判断は、各自にお任せします。
ネズミの脳みその粉末
出典・画像:BBC、The History of Teeth Cleaning、Teeth White、DentPrive