清潔や衛生の見本となる場所とは決して言えない刑務所ですが、実は衛生用品の代表格ともいえる「歯ブラシ」は、イギリスのニューゲート刑務所で発明されたことをご存知でしょうか。
刑務所で生まれた世界初の歯ブラシ
1780年、世間の波乱に巻き込まれたウィリアム・アディス(William Addis)は、路上での騒動がきっかけと言われ、刑務所に収監されることになりました。
当時、歯を磨く一般的な方法は、塩などの粉をつけた布やリネンで歯をこするというものでした。しかし、刑務所にある布が衛生的であるはずもなく、アディスはもっと衛生的な代替品を探し始めました。
そこで彼は、夕食に出た骨をこっそり取っておき、看守に賄賂を渡して豚の毛(剛毛)を手に入れます。そして骨に小さな穴をいくつも開け、その穴に毛を植え込んで固定したのです。こうして、現代につながる形の世界初の歯ブラシが誕生しました。
出所後に起業し、歯ブラシを世界中へ
刑期を終えて出所したアディスは、「ADDIS(アディス)」という会社を設立し、歯ブラシの製造・販売を本格的に開始しました。この会社はその後も事業を続け、現在でもイギリスでは「Wisdom(ウィズダム)」ブランドとして歯ブラシの老舗企業として知られています。
刑務所という予想外の場所から生まれた歯ブラシは、その後、1930年代にナイロン毛が登場して大量生産が可能となり、今では世界中の家庭に欠かせない日用品となりました。身近な道具の裏には、こんな意外な歴史が隠されているのです。

参考資料:Wisdom、Trivia Library、Gargles