ヨーロッパの歴史

マーティン・ルーサー・キング「私には夢がある」演説から50年――ワシントン大行進記念式典を振り返る

マーティン・ルーサー・キング「私には夢がある」演説から50年――ワシントン大行進記念式典を振り返る
1963年、ワシントンD.C.での演説に立つマーティン・ルーサー・キング。

25万人が集結した歴史的な記念式典

1963年8月28日に行われた「ワシントン大行進」から50周年となる記念式典が開催されました。推定25万人もの人々が参加し、人種隔離の鎖から解き放たれた、より平等な社会を求めて集結しました。これは、アメリカ合衆国において黒人の人々が受けてきた差別に対する抗議の意思表示でもありました。

1960年代まで続いた人種隔離政策

1960年代まで、アメリカの多くの州では人種隔離(セグリゲーション)が実施されていました。これは当時の南アフリカにおけるアパルトヘイトとよく似た政策で、白人と黒人はそれぞれ別の居住地区、学校、娯楽施設などで生活し、空間的にも質的にも明確に区別されていました。

しかし、さらに深刻だったのは市民権と政治的権利の不平等でした。黒人の人々は投票権を否定され、法の前での平等も認められないという差別を受けていたのです。

公民権運動の始まり

こうした状況への反発の運動は、1950年代末から1960年代初頭にかけてアメリカで形を整えていきました。個人の行動としては、1955年にローザ・パークスがバスの中で白人乗客に席を譲ることを拒否し、法廷で有罪判決を受けた出来事が象徴的です。また、集団的な活動としては、有色人種の投票権の促進と法廷での擁護を掲げたNAACP(National Association for the Advancement of Colored People:全米有色人種地位向上協会)の創設が挙げられます。その後は教会が有色人種の権利擁護の先頭に立つようになりました。

マーティン・ルーサー・キング「私には夢がある」演説から50年――ワシントン大行進記念式典を振り返る
出典:https://colorlines.com/archives/2010/12/rosa_parks.html

キング牧師の登場と「私には夢がある」演説

こうした流れの中で、アメリカの公民権運動が本格的に形成されていき、その中でバプテスト教会の牧師であるマーティン・ルーサー・キングの存在が瞬く間に注目を集めるようになりました。

先述の大行進において、キング牧師は北米の黒人の人々の権利を擁護する象徴的な演説を行い、そのメッセージはすべて、有名なI have a dream(私には夢がある)という一節に凝縮されていました。この演説は黒人が置かれた状況を糾弾し、平等・自由・友愛を求めるものでした――それは1789年のフランス革命を支えた理念と同じものです。人類全体に共通する道徳的価値観に根ざし、黒人だけでなくすべての人々にとって統合された公正な社会という希望を描いた内容でした。同時に、平和的で非暴力的な闘争の必要性も訴えられています。卓越した雄弁さと文学的な質で表現されたこの力強い演説は、黒人コミュニティにとどまらず、幅広い社会層へと浸透していきました。

暗殺から半世紀、夢は実現したのか

マーティン・ルーサー・キングは1968年、白人男性によって暗殺されました。しかし、そのメッセージは今も生き続けており、バラク・オバマの大統領就任を「あの夢の実現」と捉える人々もいます。

とはいえ、まだ長い道のりが残されています。法的な差別は姿を消しましたが、白人人口と黒人人口の間には依然として大きな経済的・社会的格差が存在しており、近年の経済危機によってその格差はむしろ拡大しているとも指摘されます。さらに、8月28日の記念式典には共和党出身の大統領が一人も出席しなかったという、決して見過ごせない事実もありました。