1787年にフィラデルフィアで開催された憲法制定会議では、新しいアメリカ合衆国の政府のかたちをめぐって、複数の構想が提案されました。その中でも特に重要だったのが「ヴァージニア案」「ニュージャージー案」、そして両者を統合した「コネチカット案(大妥協)」です。ここでは、それぞれの提案者や主な内容をわかりやすく解説します。
ヴァージニア案(Virginia Plan)
ヴァージニア案は、後に第4代大統領となるジェームズ・マディソンによって提案された構想で、人口の多い州に有利な内容でした。
- 提案者:ジェームズ・マディソン
- 代表の原理:上下両院とも、州の人口に比例した「比例代表制」を採用
- 政府の形態:立法・行政・司法の三権を備えた強力な中央(連邦)政府
- 議会:上院と下院からなる二院制
- 大統領:議会によって選出
- 最高裁判所:裁判官は議会が任命
ニュージャージー案(New Jersey Plan)
ニュージャージー案は、ウィリアム・パターソンによって提案された構想で、人口の少ない州の意見を強く反映したものでした。
- 提案者:ウィリアム・パターソン
- 代表の原理:人口の大小にかかわらず、各州が議会で平等な代表権を持つ
- 政府の形態:権限が限定された弱い中央政府
- 議会:一院制
- 行政部:議会が選出する複数の行政官による集団指導体制
- 最高裁判所:裁判官は行政部が任命
コネチカット案(大妥協 / Great Compromise)
コネチカット案は、ロジャー・シャーマンによって提案された、対立する両案を統合した妥協案です。この案が採用されたことで、現在のアメリカ合衆国議会の基本的な枠組みが確立しました。
- 提案者:ロジャー・シャーマン
- 内容:ヴァージニア案とニュージャージー案の組み合わせ
- 議会:二院制。上院は各州から同数の代表(平等代表)、下院は人口に比例した代表(比例代表)
- 大統領:選挙人団によって選出
- 最高裁判所:裁判官は大統領が指名し、上院の承認を得て就任
3つの案の比較まとめ
| 項目 | ヴァージニア案 | ニュージャージー案 | コネチカット案 |
|---|---|---|---|
| 提案者 | ジェームズ・マディソン | ウィリアム・パターソン | ロジャー・シャーマン |
| 議会 | 二院制(両院とも比例代表) | 一院制(各州平等) | 二院制(上院=平等、下院=比例) |
| 中央政府 | 強力な三権分立 | 権限の小さい政府 | 強力な三権分立 |
| 大統領 | 議会が選出 | なし(複数行政官) | 選挙人団が選出 |
| 最高裁判事 | 議会が任命 | 行政部が任命 | 大統領が指名+上院承認 |
こうして成立したコネチカット案は「大妥協(Great Compromise)」とも呼ばれ、人口の多い州と少ない州の利害を見事に調整しました。大統領が選挙人団によって選ばれる仕組みや、最高裁判事の人事が大統領の指名と上院の承認によって行われる制度など、現行のアメリカ合衆国憲法の根幹は、この妥協の産物として今日まで受け継がれています。