ヨーロッパの歴史

ソビエト連邦では何語が話されていた?多民族国家の言語事情を解説

ソビエト連邦(1922年〜1991年)は、15の共和国から構成される世界最大の多民族国家でした。そのため、連邦内では100以上の言語が話されていたとされています。ここでは、ソ連で話されていた主要な言語を詳しく見ていきましょう。

公用語としてのロシア語

ソビエト連邦における事実上の共通語(リングア・フランカ)はロシア語でした。正式には憲法で「公用語」を定めていませんでしたが、政府機関、軍隊、教育、マスメディアなどあらゆる場面でロシア語が使用され、全連邦的なコミュニケーションの基盤となっていました。

特にスターリン時代以降は「ロシア化政策」が進められ、各共和国でもロシア語教育が義務付けられるなど、ロシア語の地位は強化されました。この影響は現在の旧ソ連諸国にも残っており、多くの国でロシア語が第二言語として広く話されています。

主要な地域言語

各構成共和国では、それぞれの民族言語が公用語に準じる形で使用されていました。主な言語は以下の通りです。

  • ウクライナ語 — ウクライナ・ソビエト社会主義共和国
  • カザフ語 — カザフ・ソビエト社会主義共和国
  • グルジア語(ジョージア語) — グルジア・ソビエト社会主義共和国
  • アルメニア語 — アルメニア・ソビエト社会主義共和国
  • ウズベク語 — ウズベク・ソビエト社会主義共和国
  • アゼルバイジャン語 — アゼルバイジャン・ソビエト社会主義共和国
  • タジク語 — タジク・ソビエト社会主義共和国
  • キルギス語 — キルギス・ソビエト社会主義共和国
  • トルクメン語 — トルクメン・ソビエト社会主義共和国

これらの言語はテュルク系言語(カザフ語、ウズベク語など)と、独自の文字体系を持つ言語(グルジア語、アルメニア語など)に大別されます。

その他の重要な言語

上記の他にも、以下のような言語が各地域で話されていました。

  • ベラルーシ語 — ベラルーシ・ソビエト社会主義共和国
  • イディッシュ語 — ユダヤ系住民の間で話された言語。ビロビジャン(ユダヤ自治州)では特別な地位を持っていました
  • モルダヴィア語 — ルーマニア語に近い言語で、モルダヴィア・ソビエト社会主義共和国で使用
  • ラトビア語 — ラトビア・ソビエト社会主義共和国
  • リトアニア語 — リトアニア・ソビエト社会主義共和国
  • エストニア語 — エストニア・ソビエト社会主義共和国

バルト三国の言語的特徴

ラトビア語、リトアニア語、エストニア語は、第二次世界大戦中にソ連に併合されたバルト三国の言語です。これらはインド・ヨーロッパ語族やウラル語族に属する独立した言語体系を持ち、ソ連時代も民族的アイデンティティの象徴として大切にされ続けました。

まとめ

ソビエト連邦では、共通語であるロシア語を中心に、各共和国の民族言語が共存する多言語国家でした。しかし実際にはロシア語優位の言語政策が取られ、一部の民族言語は抑圧される側面もありました。1991年のソ連崩壊後、各国は自国語を正式な公用語とし、言語の復権が進められています。ソ連の言語史は、多民族国家における言語政策の複雑さを示す貴重な事例といえるでしょう。