ヨーロッパの歴史

なぜギリシャとローマはエジプト征服を目指したのか?両国の動機の違いを解説

古代地中海世界において、エジプトは豊かな穀倉地帯として、ギリシャとローマの双方にとって非常に魅力的な征服対象でした。しかし、両国がエジプトに抱いていた動機には、それぞれ異なる事情がありました。本記事では、ギリシャとローマそれぞれの視点から、エジプト征服を目指した理由をわかりやすく解説します。

ギリシャがエジプトを狙った理由

1. 経済的利益

エジプトは肥沃なナイル川流域に恵まれ、古代世界有数の富を誇る地域でした。エジプトを支配下に置けば、穀物や金などの貴重な資源を獲得でき、ギリシャ経済の大幅な強化につながると期待されていました。

2. 政治的影響力

エジプトは東地中海における政治的な重要拠点であり、これを掌握することで地域全体への支配力と発言力を確立できると考えられていました。

3. 軍事的優位性

エジプトは地中海に面した戦略的要衝です。ここを軍事拠点とすれば、主要な交易路を押さえ、地中海全域の制海権を握ることが可能になります。

4. 文化的魅力

高度な文明と悠久の歴史、壮大な文化遺産を誇るエジプトは、ギリシャ人にとって大きな憧れの存在でもありました。実際、アレクサンドロス大王は紀元前332年にエジプトを征服し、後に大図書館で名高いアレクサンドリア市を建設しています。

ローマがエジプトを狙った理由

1. 穀物供給の確保

ローマは膨大な人口を抱える巨大都市であり、その食料供給をエジプトの穀物生産に大きく依存していました。エジプトからの安定した穀物供給は、ローマの食料安全保障と社会の安定に不可欠なものでした。

2. 経済的支配

エジプトは東地中海の主要な交易ハブでした。これを支配すれば、地域の貴重な交易路や市場へのアクセスを独占し、莫大な富をローマにもたらすことができます。

3. 政治的統合

エジプトを版図に加えることは、領土拡大という直接的な利益だけでなく、地中海全域にわたるローマの支配体制を盤石にする上でも極めて重要でした。

4. 威信と文化的遺産

古代文明の発祥地として広く崇敬されていたエジプトを征服することは、ローマ帝国の威光と栄誉を高める絶好の機会でもありました。

結局、エジプトを手にしたのはどちら?

歴史の結果として、エジプトを最終的に征服し支配下に収めたのはローマでした。紀元前31年のアクティウムの海戦で、オクタウィアヌス(後の初代皇帝アウグストゥス)がアントニウスとクレオパトラ7世を破り、翌紀元前30年にエジプトはローマ帝国の属州へと編入されます。

一方、ギリシャ(マケドニア)側の支配は、アレクサンドロス大王の征服に始まり、その部将プトレマイオスが興したギリシャ系プトレマイオス朝によって約300年間続きましたが、最終的には維持できませんでした。こうしてエジプトは、以後長きにわたりローマ(およびその後継である東ローマ帝国)の支配下に入ることとなったのです。