フォモール族(Fomoire、またはフォモリア)は、アイルランド神話に登場する、無数の怪物たちからなる恐るべき種族です。彼らは混沌と荒廃、そして海の彼方から来る力の象徴とされ、アイルランドに相次いで渡ってきた神話上の諸民族と戦い、その土地の支配を企てたと伝えられています。
ネヴェド族への支配と過酷な貢ぎ物
フォモール族は、王ネヴェドの死後、その民であるネヴェド族を服従させることに成功しました。毎年サウィン(Samhain、11月1日を迎えるケルトの新年の祭り)には、ネヴェド族はフォモール族に対して、収穫した小麦、搾り出した乳、さらには我が子までも、それぞれ3分の2を貢ぎ物として捧げなければなりませんでした。
この過酷な貢ぎ物に絶望したネヴェド族は、ついに蜂起します。彼らは島に築かれたフォモール族の要塞へ攻め込みましたが、この決死の作戦で生き残ることができたのは、一隻の船に乗っていたわずか30人の男たちだけでした。
生き残った者たちの行方
奇跡的に生き延びた30人は、その後二つの集団に分かれて旅立ちました。一つの集団はギリシャへ向かい、もう一つは北の地へ去ったといわれています。なお、ギリシャへ渡った人々の子孫は、後に「フィル・ボルグ(Fir Bolg)」という名でアイルランドへ帰還したと伝えられています。
マグ・トゥレッドの戦い
フォモール族と、アイルランドに新たに現れた神々の一族トゥアハ・デ・ダナン(Tuatha Dé Danann)との対立は、「第二次マグ・トゥレッドの戦い」で頂点に達しました。この戦いでは、フォモール族の王バロールが、その単眼から放つ破滅的な力で敵の軍勢を圧倒しました。しかし、バロールの孫にあたる英雄ルー(Lugh)が投擲武器で祖父を打ち倒すと、フォモール族の勢力は崩壊し、彼らは海の彼方へと追放されたのです。
こうしてフォモール族は神話の中で退けられましたが、彼らの存在は、秩序ある文明に対する混沌や自然の脅威といった、ケルト世界の根本的なテーマを今に伝えています。