古代の歴史

ヘンギストとホルサ ― 最初のアングロ・サクソン王国ケントを築いた伝説の兄弟

ヘンギスト(古英語では「ヘンゲスト」)とホルサは、ユトランド半島(現在のデンマーク)出身の兄弟です。伝承によれば、彼らはグレートブリテン島への侵攻の際に自らの民を率い、イングランド南東部に最初のアングロ・サクソン王国であるケント王国を築いたとされています。

ヴォーティガーンによる招聘

尊者ベーダの『イングランド民族教会史』、および8世紀以降に無名の手によって書かれた『アングロ・サクソン年代記』によると、449年、ブリトン人の王ヴォーティガーンは、北方から脅かすピクト人やスコット人への防衛を助けるため、この兄弟をブリテンへ招いたといいます。

兄弟はケントに定住し、当初はヴォーティガーンの指揮下で戦いましたが、やがて彼に反旗を翻しました。ホルサはエイルズフォードの戦いで戦死し、生き残ったヘンギストは島にいたサクソン人の王となったと伝えられます。

史実と伝説のあいだで

ヘンギストとホルサという名前そのものは神話的な存在かもしれません。しかし歴史学者の多くは、5世紀にユート人(ジュート人)の首長とその戦士たちが、ブリトン人同士の勢力争いの中で傭兵としてケントに渡来したという点については概ね見解を一致させています。さらに、ヘンギストとホルサの物語として語り継がれた伝承は、ユート人がケントに定住した起源を今に伝える記憶なのだと考えられています。