古代の歴史

サン・セゼール|フランスの古人類学・考古学遺跡

サン・セゼール(Saint-Césaire)は、フランス南西部に位置する古人類学および考古学上の重要な遺跡です。1979年、サン・セゼール村近くにあるロッシュ・ア・ピエロ(Roche-à-Pierrot)岩陰遺跡の奥部で実施された緊急発掘調査の際、小さな穴に埋葬された若い成人男性とみられるネアンデルタール人(Homo neanderthalensis)の骨格が発見されました。

発見の意義

この発見が大きな注目を集めた理由は、出土した骨格が、それまで初期現生人類(Homo sapiens)にのみ関連づけられ、ネアンデルタール人のものとは考えられてこなかった石器やその他の人工物とともに見つかった点にあります。さらに興味深いことに、内陸部という立地にもかかわらず、被葬者とともに貝殻が埋葬されていたことが確認されました。

骨格が示す形態的特徴

骨格の年代は約3万6000年前と推定されています。激しく破砕されていたものの、骨格の大部分が回収されました。この個体はヨーロッパのネアンデルタール人に典型的な特徴を備えています。その一方で、歯はネアンデルタール人としては小ぶりであり、前頭部や顎も華奢につくられていることから、より古い時代のネアンデルタール人と比べて顔面が縮小していたことが示唆されます。

また、四肢の骨は初期現生人類のものに似ており、移動様式や腕の使い方に変化があったことをうかがわせます。こうした先祖型ネアンデルタール人に対する解剖学的変化は、中央ヨーロッパの後期ネアンデルタール人にも認められるパターンと一致しています。

文化的進化を担ったネアンデルタール人

サン・セゼールで出土した石器群は、解剖学的変化が示唆する行動様式の変化を裏付けるものとなりました。この発見を受けて、一部の研究者は、ネアンデルタール人が初期現生人類に通常結びつけられる文化的進化を遂げる能力を持っていただけでなく、実際にその一部を担っていたと結論づけるようになりました。その後、フランスのアルシー・シュル・キュール(Arcy-sur-Cure)にあるレンヌ洞窟(Grotte du Renne)など、他の遺跡での発見もこの見解を支持しています。