古代の歴史

セルウィリア・カエピオニス――カエサルの愛人にしてブルートゥスの母

セルウィリア・カエピオニスとは

セルウィリア・カエピオニス(紀元前100年頃生まれ)は、共和政ローマ末期において最も影響力を持った女性の一人です。彼女は、ガイウス・ユリウス・カエサルの暗殺者として知られるマルクス・ユニウス・ブルートゥスの母であると同時に、カエサル自身のかつての愛人でもあったという、劇的な人生の持ち主でした。

カエサルとの関係と黒真珠の逸話

セルウィリアは長きにわたりカエサルと愛人関係にあり、その絆は彼の晩年まで続いたと伝えられます。特に有名なのが黒真珠にまつわる逸話です。彼女はカエサルに対し、当時としては破格の値打ちである600万セステルティウスもの価値を持つ黒真珠を贈ったとされています。これは一般市民の年収の何十倍にも相当する天文学的な金額であり、二人の関係がいかに特別なものであったかを物語っています。

共和政を支えた貴族

セルウィリアは名門の出である高貴な貴族であり、共和政ローマ体制の熱心な支持者でもありました。彼女の家族の多くが共和派の中核を担っていたこともあり、彼女自身もまた共和主義の理念を強く抱いていたと考えられています。

小カトーの異父姉妹

セルウィリアは、共和派きっての硬骨漢として名高い小カトー(ウティカのカトー)の姉にあたりますが、正確には異父姉妹の関係です。二人の母親は同じリウィアですが、父親が異なります。弟の小カトーはマルクス・ポルキウス・カトーとリウィアの間に生まれた子であり、一方のセルウィリアはクィントゥス・セルウィリウス・カエピオとリウィアの娘でした。このように彼女は、ローマ共和政を代表する名家の血を受け継いでいたのです。

ブルートゥスはカエサルの実子なのか

セルウィリアを語る上で欠かせないのが、息子ブルートゥスの出生に関する噂です。「ブルートゥスは実はカエサルの実子ではないか」という説が古くから存在しますが、これを裏付ける確かな証拠はなく、真偽は確認されていません。なお、ブルートゥスは紀元前85年生まれとされ、当時のカエサルはまだ10代半ばであったため、年代的にもこの噂は成立しにくいとする見解が一般的です。それでもこの噂が語り継がれてきたこと自体が、セルウィリアとカエサルの関係の深さを示しているといえるでしょう。