古代の歴史

ロリカ・スクアマタ(鱗状鎧)とは?古代ローマ軍団兵の鱗甲を徹底解説

ロリカ・スクアマタとは

ロリカ・スクアマタ(Lorica squamata)は、古代ローマで用いられた鱗状の胴用防具です。その名称は次の二つの言葉に分解できます。

  • ロリカ(Lorica):古代ローマにおける身体防具、いわゆる鎧の総称。
  • スクアマタ(Squamata):「鱗」で覆われた、うろこ状の皮膚のような外観を意味する語。

つまりロリカ・スクアマタとは、無数の小さな金属板(小札)を魚の鱗のように連ねた、鎧ないし胴当てのことなのです。

ロリカ・スクアマタ(鱗状鎧)とは?古代ローマ軍団兵の鱗甲を徹底解説

歴史的背景――青銅の胸甲から鱗鎧へ

紀元前4世紀頃、ガリア人によるローマ略奪という大惨事の後、ラテン同盟の軍隊は再編成を余儀なくされました。従来の青銅製胸甲は廃され、代わりに宿敵ケルト人が用いていた環状の鎖帷子、すなわちロリカ・ハマタ(Lorica hamata)が採用されることになります。

その後、ギリシャ遠征と征服の過程で、ローマの軍団兵たちはギリシャ式の亜麻布胸甲リノトラクス(linothorax)を知ります。なかでも全面に金属の鱗を張り巡らせたタイプに注目し、一部の兵士はこれを自らの装備に取り入れたのです。

ロリカ・スクアマタ(鱗状鎧)とは?古代ローマ軍団兵の鱗甲を徹底解説

当時の彫刻や浮き彫りの表現によれば、その形状はロリカ・ハマタに近いものや、袖なしのベスト状のものなど多様でした。リノトラクスや重装騎兵(キャタフラクト)に着想を得たロリカ・スクアマタは、布地などの基材の上に小さな金属板を取り付けるという構造の原理を受け継いでいます。これらの補強板が全体として鱗のような印象を与えることが、この防具の名前の由来となりました。

構造と特徴

ローマ軍団においては、鉄(鋼)がほぼ専用に使われたと考えられています。軍団兵たちが好んだのは、「鱗」を上端で固定し、下端を自由に動くようにした形式でした。

鱗は水平方向の列に整然と並べられます。各列は一段ごとに少しずつずらして配置されるため、全体の組み方は屋根の瓦の積み方を思わせます。固定には鱗の上部に開けられた一対の小孔が用いられました。また、鱗はしばしばドーム状に膨らませるか、畝(うね)を付けて成形され、耐久性の向上が図られています。

出土した小札の多くは、幅10〜20mm、高さ20〜30mmほどの大きさで、可動する下端の縁は丸められていました。ただし、ローマ軍は近代的な意味での「規格化された軍服」を持っていたわけではありません。実際、出土品には数十種類の鱗が確認されており、なかには大きく異なる規格のものも含まれます。一部の軍団兵が、この鎧を中東風の型のものや、さらには「貝殻状の胸甲」(キャタフラクトの項を参照)へと置き換えていた可能性すら否定できないのです。

なお、ロリカ・スクアマタは軍団兵全員の標準装備ではなく、百人隊長(ケントゥリオ)、軍旗手、騎兵、鼓笛手といった特定の階級や役割の兵士に好んで着用された点も知られています。華やかで目立つ外観ゆえに、指揮官クラスのステータスシンボルとしての側面も持っていたのです。

防御性能と弱点

中東直輸入の「異色」モデルを除けば、ロリカ・スクアマタは上から下へ振り下ろされる打撃や、横からの斬撃の多くを防ぐことができました。一方で、下から上へ突き上げるような攻撃は大きな脅威でした。刃が鱗の間に入り込み、鱗を押し退けながら肉へと達してしまう恐れがあったからです。とりわけ危険だったのは、穂先の尖った武器――すなわち槍や剣による突きでした。