
ヴォート XF8U-3 クルセイダーIIIは、1955年12月にアメリカ海軍が発表したマッハ2級艦上迎撃機の競争試作に応じて、チャンス・ヴォート社が開発した航空機です。当時名機となりつつあったF8U-2 クルセイダーの後継機の座をめぐり、マクドネル社のF4H ファントムII(後のF-4 ファントムII)と激しく競い合いました。
F8U-1およびF8U-2の設計思想を受け継ぎ、海軍の旧命名体系で同じ「F8U」の呼称を用いていましたが、実際には先行機との共通点はごくわずかでした。
研究と開発
F8U-1やF8U-2の開発と並行して、設計チームはさらに大型で高性能な機体にも取り組んでいました。社内ではV-401として呼ばれたこの新型戦闘機は、外観こそクルセイダーに類似し、可変迎角翼などの設計要素を共有していましたが、より大型の機体に、アフターバーナー使用時131kNの推力を発揮するプラット・アンド・ホイットニー J75-P-5Aターボジェットエンジンを搭載していました。
超音速飛行時の方向安定性を確保するため、尾部下面には大型の垂直ベントラルフィンが装備され、着陸時には水平位置に回転する仕組みでした。また、必要な性能を保証するため、ヴォートはターボジェットに加えて推力35.6kNのロケットダイン XLF-40液体燃料ロケットエンジンの搭載も計画しました。アビオニクスにはAN/AWG-7射撃コンピュータ、AN/APG-74レーダー、AN/ASQ-19データリンクが組み込まれ、追跡システムは6機を同時に追跡し、そのうち2機に同時に交戦できる能力を持つよう設計されていました。
F8U-1からの変更点が大きかったF8U-2が一部で「クルセイダーII」と呼ばれていたことを受け、XF8U-3は正式に「クルセイダーIII」と命名されました。
試験飛行と実績
XF8U-3は1958年6月2日に初飛行を果たしました。多くの書籍や雑誌では高度35,000フィート(10,670m)でマッハ2.6に達したと伝えられていますが、試験中に実際に記録された最高速度は(一度だけ到達した)マッハ2.39であり、通常の速度はマッハ2.324を超えることはありませんでした。それでも同年8月14日、38回目の試験飛行において本機は水平飛行でマッハ2.0を突破し、ライバルのF4H-1を大きく引き離しました。
一部の資料によれば、ヴォートは尾部のロケットブースターにより最大速度マッハ2.9を目指していたとも言われます。しかし、アルミニウム製の機体構造と風防は、マッハ2.35を超える速度で発生する空力加熱に耐えられる設計ではありませんでした。到達した実用上昇限度は76,000フィート(23,170m)を超えました。
ファントムIIとの対決
最大の競合相手である後のマクドネル・ダグラスF-4 ファントムIIとの比較飛行では、ヴォートの設計が操縦性において明確な優位性を持つことが示されました。ヴォートのチーフテストパイロットだったジョン・コンラッドは後に、「クルセイダーIIIはファントムIIの周りをぐるぐると旋回して飛べた」と語っています。戦闘状態での推力重量比(T/W比)は0.97とほぼ1に迫り、F4Hの0.87を上回っていました。
しかし、XF8U-3の単座パイロットは、迎撃機を操縦しながらスパロー空対空ミサイルを運用するという膨大な作業負担に一人で直面することになりました。スパローは目標への常時レーダー照射を必要とするミサイルだからです。一方のファントムIIにはレーダー迎撃士官(RIO)が搭乗しており、業務を分担できる体制が整っていました。
さらに、「機銃の時代は終わった」という認識が広まる中で、ファントムの大幅に大きな兵装搭載量と、空対空だけでなく空対地任務もこなせる多用途性が、高速ながら単一任務に特化したヴォートの戦闘機を決定的に圧倒しました。
同様の理由から、ファントムはベトナム戦争中、海軍の主力昼間制空戦闘機としてF-8 クルセイダーに取って代わることになります。当初はミサイル装備の迎撃機として、クルセイダーのような昼間戦闘機の補完を担うはずだったのとは対照的な結末でした。
計画の中止とその後
計5機が製造されたところで、F8U-3計画は中止されました。うち3機が試験プログラムで飛行し、その後、残りの2機の機体とともにNASAへ移管され、高高度大気試験に用いられました。クルセイダーIIIは地球の大気層の95%よりも高い高度を飛行できたためです。パタクセント・リバーで飛行するNASAのパイロットたちは、模擬空戦で米海軍のファントムIIを日常的に迎撃して圧倒してみせましたが、海軍側からの苦情により、この「嫌がらせ」はついに終止符を打たれました。
すべてのクルセイダーIIIは、後に解体され現存していません。
主要諸元
- 最大速度: 2,928 km/h
- 質量: 9,915 kg
- 全長: 18 m
- 翼幅: 12 m
- 航続距離: 1,040 km
- エンジン: プラット・アンド・ホイットニー J75
- 初飛行: 1958年6月2日