古代の歴史

インドの不可触民(ダリット)はどのような仕事をしていたのか?

不可触民(アンタッチャブル)とは何か

「不可触民」とは、インドのカースト制度において最下層とされ、カースト体系そのものの外に置かれていた人々を指します。現在では「ダリット(Dalit)」という呼称が一般的に使われています。彼らは長い歴史の中で深刻な差別と社会的排除を受け、「触れると穢れる」という偏見のもと、他のカーストの人々が忌避する仕事を担わされてきました。

ここでは、かつて不可触民に割り当てられていた代表的な仕事を紹介します。

不可触民に課された主な仕事

1. 手作業による清掃(マニュアル・スカベンジング)

街路、側溝、トイレなどから人の排泄物や廃棄物を取り除く作業です。極めて屈辱的であるうえ、健康被害のリスクも高い過酷な労働でした。

2. 死んだ動物や廃棄物の処理

死んだ動物の処理や各種廃棄物の運搬・処分も不可触民の役割とされました。保護具や衛生設備がほとんど与えられないまま、こうした作業を強いられることが少なくありませんでした。

3. 清掃業務

公共施設、家庭、寺院などで掃除人として働き、床の掃除、洗濯、食器洗いなどの雑務を担当していました。

4. 皮革加工

多くの不可触民は、皮なめし、靴作り、動物の死骸の取り扱いといった皮革関連の仕事に従事していました。これらは「穢れた職業」とみなされ、彼らは村や町の外に設けられた指定区域に住むことを余儀なくされることもありました。

5. 衛生関連の労働

街路、排水溝、水源地などの公共空間の清潔維持を担当しました。危険な環境での作業が求められながらも、適切な安全装備はほとんど支給されませんでした。

6. 単純労働

道路工事、井戸掘り、重い荷物の運搬など、さまざまな単純労働に従事させられました。賃金は非常に低く、劣悪な条件のもとで働かされるのが常態でした。

7. 農業労働

一部の不可触民は農業労働者として、収穫、播種、除草などの作業を行っていました。しかし、差別により均等な機会や公正な報酬から排除されることが多かったのです。

現在の状況と法的な位置づけ

重要なのは、不可触民制(不可触賤民制)はすでにインド憲法によって廃止され、カーストや社会的背景にかかわらず、すべての市民に平等な権利が保障されているという点です。また、カーストに基づく差別は法律で禁じられています。

しかしながら、現実には今日でも一部の地域でカースト差別が根強く残っており、政府やNGO、市民社会による啓発活動や政策を通じて、社会的包摂の実現に向けた取り組みが続けられています。