古代の歴史

フラワー級コルベット――花の名を持つ小型護衛艦、大西洋でUボートと戦い抜いた

フラワー級コルベットとは

フラワー級コルベット――花の名を持つ小型護衛艦、大西洋でUボートと戦い抜いた
フラワー級コルベット(Flower-class corvette)は、第二次世界大戦中にイギリスで設計・建造された小型の対潜護衛艦である。大西洋、北極海、地中海、さらにインド洋やアフリカ沿岸に至るまで、ドイツ海軍のUボートとの苛烈な戦いに終始投入され、連合国の生命線である海上輸送路を守り抜いた、歴史に名を刻む艦艇として知られている。

艦名にはバラ、スミレ、シャクナゲといった、庭園でおなじみの草花の名が数多く採られた。園芸への情熱で知られるイギリスらしい命名だが、これらの小さな艦が、控えめながらも目的に適った兵装と優れた実用性によって、終始頼れる「番犬」として活躍した事実を象徴してもいる。

主要諸元

  • 排水量:基準900トン/満載1,245トン
  • 寸法:全長62.5m × 全幅10.11m × 喫水4.14m
  • 速力:約16.5ノット
  • 機関:三段膨張式蒸気機関1基+ボイラー2基、出力2,750馬力、スクリュー1軸
  • 燃料:重油
  • 乗員:86名

兵装

102mm単装砲1門、40mm機関砲1門、20mm対空機関砲2門に加え、対潜爆雷40発と爆雷投射機4基を搭載。対潜戦闘に特化した、簡素ながら実戦的な構成であった。

運用国

イギリス海軍をはじめ、カナダ、アメリカ、ノルウェー、自由フランス海軍(FNFL)、ユーゴスラビアなど、多数の国で運用された。

開発の経緯――捕鯨船が生んだ「花」

「フラワー」の名を持つ護衛艦の歴史は、第一次世界大戦にさかのぼる。1916年から17年にかけて、皇帝直轄の潜水艦(Uボート)に対抗するため建造された初期の「フラワー」たちは、当時の標準的な貨物船に似たシルエットを採ることで、潜望鏡越しのUボートを欺く工夫が凝らされていた。

一方、1940年以降に建造された本級は、先代の単純な後継ではなく、大きく性格の異なる存在だった。最大の特徴は、軍需で飽和状態にあった海軍工廠の負担を軽減するため、建造をすべて民間造船所に委ねた点にある。対象となったのは、大型トロール船やマグロ漁船、捕鯨船の建造を得意とする民間企業であり、軍用艦の技術に不慣れな工場でも比較的容易に組み上げられるよう設計されていた。

設計の母体となったのは、スミス社ドックが手がけたグリーノック籍の有名な捕鯨船「サザン・プライド(Southern Pride)」である。これを9メートル延長した船体は、北大西洋の荒天に耐える高い堅牢性と優れた耐航性を備え、「鋼の鯨」狩りにまさにうってつけの性格を持っていた。なお、民間船型を護衛艦へ転用する発想自体は、1917年から18年の「キル(Kil)」級ですでに試みられていたことも付記しておきたい。

量産と各国への供給

各造船所の生産能力はまちまちで、小規模なアレサ、ブライス、ファーガソン各社から、タイタニック号を建造したことで知られる北アイルランドの巨人ハーランド&ウルフまで、1社あたり2隻から30隻前後を納入した。イギリスの造船所から合計143隻、捕鯨船建造の経験豊富なカナダの造船所から68隻が竣工し、総勢200隻を超える大群が編成されることになった。

本国イギリス海軍のみならず、カナダ海軍、そして自由フランス海軍の乗員たちも本級に深い信頼を寄せた。特にFNFLのコルベット「アコニット(Aconit)」の戦果は伝説として語り継がれている。休戦協定の時点で、すでに4隻が就役し、9隻が自由フランスの旗の下で戦っていたのである。

興味深いのは、1942年に深刻な対潜護衛艦不足に陥っていたアメリカに対し、25隻が逆に貸与されたことである(米海軍では「テンプトレス級」として分類された)。レンドリース法による援助とは逆方向の供給という、皮肉な逆転現象でもあった。

長く激しい戦い

フラワー級の活動期間は非常に長く、その任務は過酷を極めた。1945年2月には、新型のXXI型Uボートを追跡したと証言する乗員もいる。ただし本級の速力は16.5ノットにとどまり、10〜11ノットで航行する輸送船団に随伴するのが精一杯で、高速の水中目標を追うには心許ない側面もあった。

また、建造所や時期によって推進機関、電気系統、換気装置、竜骨やバラスト、兵装、アンテナ、アクティブソナー(ASDIC)などの装備に差異が多く、同型艦でありながら一隻ごとに顔が異なるのも大きな特徴だった。それでも厳しい任務の中で、32隻が戦没している。

改修型(改フラワー級)

1942年から1944年にかけて、主にカナダの造船所で改良型が登場した。「改フラワー級(Modified Flower class)」と呼ばれるこのグループは、新設計の船体形状、より高く居住性を改善した上部構造物、無線方位測定装置ハフ・ダフ(Huff-Duff)用アンテナ、強化された対空火器などを備えていた。戦没は1945年の「トレントニアン」と「メリトニア」のわずか2隻にとどまり、改良の成果を如実に示している。