
BA-10の基本諸元
型式: 装輪装甲車
乗員: 4名
武装: 45mm戦車砲1門、同軸7.62mm DT機関銃1挺、車体前面(運転手横)に7.62mm DT機関銃1挺
装甲厚: 最小6mm/最大15mm
寸法・重量
全長: 4.65m
全幅: 2.07m
全高: 2.21m
戦闘重量: 約5t
接地圧: 3.15kg/cm²
パワーウェイトレシオ: 9.8馬力/トン
エンジン: GAZ-M1型 直列4気筒水冷ガソリンエンジン(2,800回転時50馬力)
走行性能
路上最高速度: 55km/h
航続距離: 300km
越壕能力: ほぼ皆無
障害物超越能力: ほぼ皆無
登坂能力: 20度
就役期間: 1938年~1943年(赤軍)
開発の背景
1931年以降、ソ連の自動車産業は赤軍向けに六輪装甲車シリーズの生産を本格化させました。最初の車両はBA-27Mで、同年には水陸両用のBADやD-13も登場しましたが、いずれも試作段階を脱することはできませんでした。
軍が正式採用した初の六輪中型装甲車は、1932年のBA-Iでした。イジョルスク工場で製造されたこの6x4駆動車は、アメリカから輸入したフォード・ティムケン社のトラックシャーシを流用していました。その後、武装や細部設計に改良を加えた少量生産が行われ、やがて国産のGAZ-AAA六輪シャーシへと移行していきます。
BA-3からBA-10への進化
1933年には、GAZ-AAAシャーシをベースとするBA-3が誕生しました。これもイジョルスク工場製の6x4駆動車で、T-26軽戦車と共通の砲塔に45mm砲と同軸機関銃を搭載していました。
特筆すべきは、後輪周りに補助履帯(クローラー)を装着できる点です。これにより不整地での走破性が大幅に向上しました。さらに、車体側面の軸に取り付けられた予備タイヤは自由に回転する構造となっており、障害物を乗り越える際に車体を支える補助ローラーとして機能しました。この特徴と補助履帯の機構は、以降の六輪装甲車シリーズすべてに受け継がれています。BA-3は偵察部隊の標準装備として、第二次世界大戦開戦まで第一線に留まりました。
1935年、ソ連は初の水陸両用装甲車PB-4を試作しましたが、こちらは実験段階にとどまりました。同年、イジョルスク工場はBA-3の改良型であるBA-6を設計します。ここから3つのバージョンが生まれ、すべて軍に採用されました。すなわち基本型のBA-6(1935年)、鉄道走行用のBA-6ZhD(1935年)、そして改良型のBA-6M(1936年)です。これら3形式はいずれも、1936年から1939年にかけての各種軍事作戦に投入されています。
1936年にはBA-6Mの発展型であるBA-9が登場しました。GAZ-AAAシャーシを用いたこの車両は、重量と武装の面で先行車両と異なっていましたが、ごく少数の生産にとどまりました。同じ頃、スペイン内戦では共和政府軍が標準的な六輪装甲車を実戦使用し始めます。ソ連はこのタイプの車両を約100台スペインへ供与するとともに、技術者を派遣して現地でのライセンス生産を支援し、1937年から1938年にかけて実際に製造が行われました。
BA-10の登場と実戦
1938年、赤軍はBA-9をさらに発展させたBA-10を採用しました。これもイジョルスク工場の設計局によるもので、1938年から1941年にかけて大量生産されました。基本型のBA-10に加え、1938年には鉄道走行仕様のBA-10ZhDも登場しています。偵察部隊および独立装甲旅団の標準装備となったBA-10は、1943年まで現役で活躍しました。
この時代に就役したソ連の装甲車群は、スペイン内戦のみならず、満州(ノモンハン事件など)における日本軍との戦闘、フィンランドとの冬戦争、そして独ソ戦の初期段階にも投入されました。
中型六輪装甲車シリーズと並行して、ソ連は重装備の六輪モデルも複数開発しています。有名な水陸両用のBAZ、ガソリンエンジン搭載のBA-11、ディーゼル版のBA-11Dなどがそれで、これらも東部戦線で戦いました。さらに、衛生車(野戦救急車)、燃料補給車、兵員輸送車といった多数の派生型も製造され、六輪装甲車ファミリーは多方面で活躍したのです。