テル・アル・ウバイド(Tell al-'Ubayd)は、現在のイラク南東部、古代都市ウルの遺跡近くに位置する先史時代の重要な遺跡です。この遺跡は、メソポタミアにおける先史文化の一時期であるウバイド文化期(Ubaid period)の名称の由来となったことで広く知られています。
発掘で明らかになった南部メソポタミアの様相
これまでの発掘調査により、ウバイド文化に関わる遺構や遺物が南部メソポタミアの各地から数多く出土しています。この時期を最も特徴づけているのは、磨き上げた素地、あるいは無地の地色の上に、幾何学文を中心に、ときには植物文や動物文を濃色で描いた彩文土器です。
また、多くの容器は簡易ろくろ(スローホイール)を使って成形されたとみられ、環状の把手(取っ手)や注口が付けられていました。注口付き容器の登場は、歴史上初めて確認された事例として考古学的に非常に重要です。
ウバイド文化期の編年(年代)
南部メソポタミアでは、ウバイド文化期はおよそ紀元前5200年頃から紀元前3500年頃まで続いたと考えられています。一方、北部メソポタミアでは、ウバイド文化的な特徴を持つ遺物は紀元前4300年頃から出現し始めます。
北部ウバイドの起源をめぐる議論
北部におけるウバイド文化期の特徴については、その起源をめぐって二つの説があります。一部の学者は、先行するハラフ文化期(Halaf period)の諸要素から発展したものだと考えています。他方で、南部メソポタミアからの直接的な文化的影響の結果だとする見方もあります。
起源論争とは別に、ウバイド文化期を見る上で特筆すべきは、ペルシア湾から地中海に至る広大な地域全体に及ぶ高度な文化的均質性です。土器様式や建築技術などに共通した特色が広域で確認されることは、当時のメソポタミア世界で活発な交流と伝播が行われていたことを示唆しています。